女子第2回大会の記事
群馬女短大付 初優勝
高校最高記録でテープを切る群馬女短大付のアンカー角田 |
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スタート直後からハイペースの戦いとなり、2区で先頭に立った群馬女短大付がその後もトップを保ち、1時間8分51秒の高校日本最高記録、大会新記録で初優勝、2年連続して関東勢が栄冠を獲得した。
2位の前回優勝校、市船橋も1時間9分14秒の高校日本最高をマーク。3位の筑紫女学園まで大会新記録だった。高校女子長距離界の急速なレベルアップを示す記録が続出し、最下位・高岡商の1時間18分45秒も、昨年の最下位・弘前実の1時間23分23秒を4分以上も上回った。
■ レース評
18の区間新誕生
1区4キロ付近の鯉川(筑紫女学園[40])、大谷(市船橋[12])、水多(群馬女短大付[10])らのトップ集団 |
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1区は予想通り鯉川(筑紫女学園)が引っ張り、速い展開。鯉川はトップで2区へ。4秒差で石井(大阪成蹊女子)、さらに大谷(市船橋)、水多(群馬女短大付)と続いた。
2区は、1キロ過ぎて下司(筑紫女学園)、山口芳(大阪成蹊女子)、田村(群馬女短大付)、高杉(市船橋)が横一線。残り1キロで田村と高杉が抜け出し、田村が一歩リードのまま3区へ。50メートル差で下司、山口と続いた。
3区に入ると、群馬女短大付・河田が市船橋との差を45メートルに。さらに90メートル遅れて筑紫女学園。鈴峯女子はエース亀高が不調で脱落。4区でも群馬女短大付は久保田が下り坂を利用して快調なペース。市船橋との差は約130メートルと開いた。筑紫女学園はさらに55メートル遅れで、宇治、埼玉栄は首位争いの圏外に。
群馬女短大付の1年生アンカー角田は、グングン飛ばす。筑紫女学園の1年生、宮崎もハイペースで追いかけ、1.5キロで川島(市船橋)に並んだ。3.5キロすぎ、川島が宮崎を引き離して角田を追撃したが、角田がそのまま川島に100メートル以上の差をつけゴールイン。3位は筑紫、4位は埼玉栄が食い込んだ。
群馬女短大付と市船橋が高校最高記録を更新、5区間で計18の区間新が出た。すさまじいまでのレベルアップを象徴する高速レースだった。
無心の快走 5強抜いた
「優勝は無理だから、とにかく5強について走りなさい」。レース前日、群馬女短大付の吉沢監督は選手に、こう言った。5強とは、前評判の高い筑紫女学園、市船橋、埼玉栄、鈴峯女子、宇治。1区の水多も、遠のく筑紫女学園・鯉川と市船橋・大谷の背を見て「やっぱりレベルが違う」と感心したという。それでも水多は監督の言葉を忘れず、高速レースの波に食い下がった。
4位でタスキを受けた群馬女短大付の1年・田村は本来、800メートルのランナー。「負けてもともと。離されずについていこう」。足がよく伸び、軽快な走り。前を走る筑紫女学園の下司の走りが重苦しく、田村は大阪成蹊女子の山口芳、市船橋の高杉とともに首位争いに加わった。1年生は田村だけ。しかし、気後れする様子は全くなく、残り300メートルでスパートしてトップに。
152センチの小さな体で駆けて来る田村を見て、3区の河田は「私も頑張らないと」と発奮。前年優勝の市船橋につけた40メートル差は、高校総体400メートルで今季日本最高記録を出して連覇の4区・久保田が130メートルに広げ、1年生アンカーの角田の負担を軽くした。各走者が積極的に力を出し切る理想のレース展開。優勝を意識してぎこちないレースに終始した強豪とは対照的だった。
吉沢監督も選手も「優勝なんて思ってもみなかった」と口をそろえた。予選タイムが優勝タイムより3分も遅い1時間11分53秒だから無理もない。が、11月の東日本女子駅伝で優勝した群馬チームの大半は、この日の走者。吉沢監督は陸上競技経験はなく独学で800メートルの日本記録保持者、新井文子(三田工業=当時)を育て上げた。持論は「400メートルを走れたら長距離も克服できる。」これを裏付けるように、スピード豊かな中距離のスペシャリストがつかんだ長距離の栄冠でもあった。
吉沢監督は「来年も勝てないと言い続けるでしょう。無欲で走るのが一番なんです」と言った。挑戦者精神を持続させて新たな飛躍を期す新チャンピオンの意気込みを表現していた。
【堂馬 隆之】◎ トピックス
記録
1時間8分51秒の群馬女短大付など2位までが高校最高、3位までが大会新記録を更新した。これまでの記録は、高校最高は筑紫女学園(福岡)が今年の九州大会でマークした1時間9分16秒。大会記録は前回の第1回大会で市船橋がマークした1時間9分48秒。
区間新記録
1区で19分39秒の鯉川なつえ(筑紫女学園)ら8人、2区で12分57秒の田村久美(群馬女短大付)ら8人、3区で9分55秒の水口志保(埼玉栄)ら2人がそれぞれ更新。