女子第5回大会の記事

【「全国高等学校駅伝競走大会 50年史」(全国高等学校駅伝競走大会実行委員会・2000年5月発刊)より抜粋】

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仙台育英が高校最高V

高校最高記録で優勝した仙台育英のアンカー、ムタヒ
高校最高記録で優勝した仙台育英のアンカー、ムタヒ

第5回大会はケニア人留学生を擁する仙台育英が初優勝し、同校は史上初の男女同時制覇を果たした。仙台育英は1区でワンジロがトップに立ち、2区の菅原、5区のムタヒも区間賞を獲得する快走。全区間でトップを守る圧勝だった。タイムは同校が今大会の宮城県予選でマークした1時間7分58秒の高校最高記録を更新する1時間7分32秒の大会新。

2、3位の熊本市商、市船橋も大会新を記録するハイレベルなレースとなった。市船橋、宇治、筑紫女学園は第1回大会以来5年連続の入賞。

■ レース評

3位まで大会新

1区5.5キロ付近で聖和学園の高橋を捕らえ一気に先頭に立つ仙台育英のワンジロ
1区5.5キロ付近で聖和学園の高橋を捕らえ一気に先頭に立つ仙台育英のワンジロ

3位までが大会新の高速レースとなった。1区は4キロ過ぎの上り坂で仙台育英・ワンジロ、聖和学園・高橋が抜け出して競り合い、残り500メートルでスパートしたワンジロが区間新記録で1区を制した。2位に聖和学園、3位に鹿島実が入り、熊本市商は5位、市船橋は8位。宇治は1分29秒差の32位と出遅れた。

2区はトップの仙台育英・菅原が最初から飛ばして快走。40秒差で聖和学園が続き、熊本市商は2位に3秒差の3位に浮上。市船橋も5位に上がった。

仙台育英は4区で2位との差が23秒とやや縮められたが、5区でアンカーのムタヒが大きなストライドで再び2位との差を39秒に広げゴール。熊本市商は残り1キロ地点で2位の市船橋に追いつき競技場内まで並走、熊本市商・上妻が最終コーナーでスパートし、逆転した。

昨年2位の宇治は1区の遅れにもあきらめず、2区の千葉が17人抜きの活躍をみせるなど激しく追い上げて5位。前半踏ん張った聖和学園は後半伸びずに13位に終わった。

先手必勝の狙いピタリ

1区を区間新の19分17秒で走り抜けたワンジロは、新記録を知らされると、「えーっ、うそー」と声を上げ喜んだ。2区で2位に40秒差をつけた菅原は走り終わるとすぐに「タイムはどうでしょうか」と尋ね、記録を聞くとにっこり。つらい様子も見えず、気負いもまったく感じられない堂々とした仙台育英の選手たち。1時間7分32秒の高校最高記録を掲げて、文句なしの最強チャンピオンとなった。

県予選で2区を走ったムタヒを5区に回し、アンカーを走った菅原を2区に上げた。2区のコースはアップダウンがきつい坂道。5区は下りから平たんなコース。ムタヒの169センチの身長と長い足を生かすのは5区と判断した二階堂邦博監督は、最初から積極的に飛ばすワンジロと菅原の2人を1、2区に置き、この2人で勝負を決めようという強気の作戦で臨んだ。選手たちも完ぺきに作戦通りのレースを展開。菅原から3区・八島にタスキが渡った時にはすでに二階堂は優勝を確信していた。

ポイントとされた中盤の八島、金森には「最初1キロは冷静に、あとは思い切って攻めろ」と指示を出したが、2人とも余裕のある独走だった。アンカーのムタヒも予想通り、持ち味を生かした守りの走りで16分を切る好走。前区間の走者の好記録に刺激を受け、「よし、私も」とチーム内で競り合ったことが好結果を生んだ。

ケニアから留学生が来てから練習方法を野外走に変え、徹底的な個人練習を増やした。監督が引っ張るのではなく、選手が各自で自主管理することで精神的にも強くなった。しかし何よりもチームに溶け込み、チームのムードを盛り上げたワンジロとムタヒの明るさが、チームの和をつくり上げた。モットーの「楽しく走る」を実践した仙台育英。「7分台」とした目標も達成し、頂点に上り詰めた。

【市川 由美】

◎ トピックス

進む国際化

仙台育英の男女優勝には、それぞれケニアからの留学生2人が重要な役割を果たしたが、高校スポーツ界では、国際化が進んでいる。93年のインターハイの卓球は、中国人留学生が男女シングルスを制覇。同バスケットボール女子優勝の中村学園女子にも韓国から留学生2人が加わっていた。

全国高体連は加盟校の生徒について国籍を問わず、高校駅伝も含めたインターハイへの出場を認めている。公平な競争の保護と将来の日本代表選手を育てる観点から、競技によっては出場できる人数に制約をつけているが、外国籍高校生の出場は今後も増えそうだ。