女子第7回大会の記事
埼玉栄、逆転で初優勝
1位でテープを切る埼玉栄のアンカー小島 |
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埼玉栄が鮮やかに逆転勝ち。6回目の出場で初優勝を遂げた。男子と同様、1区は仙台育英のケニアからの留学生、アン・ワムチが区間賞を獲得。
対照的に埼玉栄は12位と出遅れながら、2区から5区まで4人連続で区間賞を奪う快走。4区で首位に立つと、そのまま逃げ切って1時間8分13秒でゴールでした。3連覇を阻まれた仙台育英は2位に沈んだ。3位には第1回大会から7年連続入賞を果たした市船橋が入り、4位の熊本市商も4年連続の入賞。須磨女子、宮崎工、近大福山は初入賞と健闘。初出場で12位に入った樟南の奮闘ぶりも目立った。
■ レース評
2区からの4連続区間賞
「花の1区」を走る選手たち。この後、仙台育英・ワムチ[4]がトップに抜け出る=1.3キロ付近で |
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層の厚さを誇る埼玉栄が2区以降で区間賞を連取。逆転で初優勝を飾った。
1区は仙台育英・ワムチが抜け出し、前傾気味の力強い走りで後続に14秒差をつけた。西京・吉村、添上・山中美、松山商・黒星と、昨年も1区を担った選手が続いた。
埼玉栄は1区・守屋が38秒差の12位と出遅れたが、2区で1年生の橋本が一気に3位に浮上。3区・廿野も従来の記録を3秒更新する区間新の快走で2位に。仙台育英に12秒差と、完全に射程距離に迫った。
4区・田中は着実に差を詰め、2キロ地点で先頭を奪うと一気に逃げて優勝を固めた。最終的には2位との差を大会史上初めて1分以上に広げる圧勝。1年生が3人もいながら、無理なスペースの変化をせず、むだのない動きとテンポの良い走りを守った地道な追い上げが実った。
仙台育英は全体的に走りが重く、先行逃げ切りの形に持ち込めなかった。3位以内入賞を7年連続に伸ばした市船橋の安定感は相変わらず見事。熊本市商、初入賞の須磨女子は終盤の追い上げが光った。
追走の埼玉栄 4区で「いける」
4区でトップの仙台育英・千葉(右)を抜き去る埼玉栄・田中=2キロすぎで |
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4区の中間点が目前だった。沿道に陣取る埼玉栄の応援団。トップを行く仙台育英・千葉を追う埼玉栄・田中の視野に、千葉の背中が徐々に大きくなっていった。応援団の声援に後押しされ、田中は「トップを奪える」と確信した。
中継地点まであと1キロ。ついに千葉を捕らえ、勢いに乗って抜き去った。逆にリードを広げて、最終走者の小島にタスキを渡した。
シナリオ通りの逆転劇だった。1区で12位と出遅れ、トップとの差は38秒。2区の橋本は「思っていたより差がついていて、びっくりした」と戸惑ったが、5,000メートルで出場選手最高タイムを持つ自信で、「自分は強いんだ。焦らず、平常心で」と冷静さを取り戻した。その力を存分に出し切り、逆転への下地を作った。
約1キロ上って、その後は長い下りが続く2区。ペース配分の難しい区間だが、「苦手な上りや、リズムの切り替えも、クロスカントリーの練習で克服できた」という橋本。3年前の予選敗退を機に、クロカン重視に発想の転換を図った大森国男監督の指導が、橋本の走りに結実していた。
その力走は、「1年生の勢いを借りて波に乗れた」という3区・廿野の区間新の走りも生んだ。
プレッシャーの中でも、落ち着きを失わなかった1年生トリオ。中でも田中は、レースが近づいても調子の上がらない鳥海に代わって抜てきされ、「果敢さを買った」という大森監督の期待に応えた。
橋本、小島とも駅伝に魅せられ、高校進学後に陸上部に入った。いわば発展途上の「素人集団」(大森監督)で、何度も優勝候補に挙げられながら越えられなかった厚い壁を突き破った。夏の高校総体11連覇のトラックの女王が、駅伝でも「黄金時代」を築くことを予感させる初優勝だった。
【阿相 久志】◎ トピックス
震災乗り越え初入賞
須磨女子は3回目の出場で、チーム最高の5位と健闘。阪神大震災の影響で神戸市内にある学校近くでロード練習がまったくできず、3区に予定していた選手が大会直前に故障してリタイアするなど、決して万全の状態ではなかった。しかし、川島亜が6位にがんばるなど各区間とも粘り強い走りを展開。初出場時の一昨年は19位、昨年は10位と、毎年順位を前半の半分にする躍進ぶり。長谷川重夫監督は「最高のレース。今年はいろいろあったが、周囲の人に支えられ、本当にいい経験をさせてもらった」と感無量だった。