女子第10回大会の記事

【「全国高等学校駅伝競走大会 50年史」(全国高等学校駅伝競走大会実行委員会・2000年5月発刊)より抜粋】

現在の校名・旧校名一覧

田村が逆転で初優勝

勝利の喜びを全身で表し、ゴールする初優勝した田村のアンカー菅野
勝利の喜びを全身で表し、ゴールする初優勝した田村のアンカー菅野

5年ごとの記念大会で地区代表11校を加えた58校が出場。5年前の初出場時に50位だった田村が1時間7分56秒で初優勝を飾った。2区で先頭に立ち、4区で2位に落ちながらアンカー菅野の区間新の快走で逆転勝ちした。

2位には地区代表で出場した熊本市商が5年ぶりに入り、藤永が1区区間賞の快走をみせた諌早が過去最高の3位に食い込んだ。昨年2位の西京は4位にとどまったものの5年連続入賞。7位の愛工大名電が愛知県勢として初の入賞を果たした。市船橋は18位と後退し10年連続入賞はならず、昨年まで3連覇の埼玉栄は32位に終わった。

■ レース評

地区代表出場の熊本市商5年ぶりの2位

2区3.1キロ付近で諌早・柴原(左)をとらえ、追い抜きにかかる田村・鴫原(中央)と立命館宇治・桝本
2区3.1キロ付近で諌早・柴原(左)をとらえ、追い抜きにかかる田村・鴫原(中央)と立命館宇治・桝本

狙い通りのアンカー勝負に持ち込んだ田村が、逆転で混戦を制した。約50メートル差でタスキを受けた5区の菅野は、残り3.4キロで先頭の熊本市商を捕まえた。区間新の快走で、最後は逆に200メートル以上の差をつけていた。

有力校の立ち上がりが注目された1区は、超高校級の諌早・藤永が予想通り、序盤から集団を抜けて独走した。立命館宇治の阪田が18秒差の2位。田村の渡辺も19秒差の3位に粘った。

田村は2区の鴫原が立命館宇治・桝本と並走してペースを上げ、中継所の手前約500メートルで諌早を抜いて先頭に立った。4区で熊本市商の渡辺にリードを許したが、逆転圏内でエース・菅野にタスキを渡せたのが初優勝につながった。

2位には1区9位から順位を上げていった熊本市商、3位には諌早と九州勢が上位に入った。前年2位の西京は4位。4連覇がかかっていた埼玉栄は主力級の卒業が響き32位だった。

逆転の田村 総合力で優勝

「よっしゃ、行くぞ」。1位の熊本市商から11秒遅れでタスキを受けた田村のアンカー・菅野は、心の中で気合を入れた。勝利の確信に満ちた、力強い足取りでグイグイと熊本市商の高木に迫り、1.6キロ地点で抜き去った。最後まで混戦が予想された女子の勝負は、菅野の区間新記録の走りで、5区の序盤であっけなく決まってしまった。

日本ジュニア選手権3,000メートルで1、2位の菅野、渡辺の両エースをどの区間に配置するかに注目が集まったが、下重監督は終盤の競り合いを予想し、冷静な渡辺を1区に、勝負強い菅野を5区と、3カ月前から決めていた。体調を崩していた渡辺も実力を発揮、下重監督の読みが的中した。

しかし、殊勲選手を問われた下重監督は「2区、3区です」と言い切った。2区の鴫原は渡辺から3位でタスキを受け、ゴール直前に「絶対に負けれない」と猛烈なスパートを見せ、立命館宇治のエース桝本とのデッドヒートを制し、区間4位の走りで1位に躍り出た。いつも後半に失速する選手とは思えない粘りだった。

鴫原は、入学時の3,000メートルの記録が11分台で「チームで一番遅かった」という。しかし、下重監督の勧めで、1年生の土・日曜は険しい山野を上り下りする山岳競技の練習に参加し1人遅れながらも黙々と練習メニューをこなして力をつけ、日本ジュニア選手権3,000メートル7位入賞を果たした。

1位を守った3区の橘内も、山岳競技への“出向”組。国体の山岳競技で上位入賞し、県予選では起用されなかったが、東北地区大会で初めて与えられたチャンスを生かして今大会の快走につなげた。

下重監督は「菅野、渡辺が3年になったら優勝を狙う」と話していた。スピード練習では、昨年より速いタイム設定をするなど練習の質を高めた。菅野が「練習でもよっちゃん(渡辺芳子)に負けると悔しい」と言うように部内の競争も効果も上げた。

「最後の年にかける思いが2年生にうまく伝わった」。涙ぐみながら、晴れやかな笑顔を見せる渡辺の言葉が、中学時代は無名だった選手たちが総合力で勝ち取った優勝を象徴していた。

【亀田 早苗】

◎ トピックス

“皆勤賞”は10校

第10回を迎えた女子大会。第1回から途切れることなく連続出場している“皆勤賞”の高校は10校ある。前日の開会式では、その10校に表彰状が贈られたが、そのうち1校の豊見城南の比嘉幸子監督は、前監督から引き継ぎ指導歴7年目で「早いですねぇ」と感慨深げだった。第1回は46位。順位を上げて昨年は12位と健闘した。この大会は43位と振るわなかったが、「長距離をやる者には1年間の総決算。気合が入ります」。