女子第11回大会の記事

【「全国高等学校駅伝競走大会 50年史」(全国高等学校駅伝競走大会実行委員会・2000年5月発刊)より抜粋】

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筑紫女学園8年ぶりの女王

ゴールテープを切る筑紫女学園の池田(後方は須磨学園・北山)
ゴールテープを切る筑紫女学園の池田(後方は須磨学園・北山)

筑紫女学園が、競技場まで続く激しいアンカー勝負の末、わずか1秒差で須磨学園を際どくかわし、8年ぶり2回目の優勝を決めた。1、2位の1秒差決着は女子では初めて。

須磨学園は前年の5位から過去最高の2位へ。諫早は1区・藤永が区間新をマークし、アンカー大渡も区間3位と追い込んだが、及ばず2年連続の3位。優勝候補の立命館宇治はエースの欠場が響き4位。昨年優勝の田村は、1区の出遅れで13位。8位までの入賞を西日本勢が独占したのは初めて。

■ レース評

1秒差で須磨学園を振り切る

5区4.3キロ付近で競り合う筑紫女学園・池田(右)と須磨学園・北山
5区4.3キロ付近で競り合う筑紫女学園・池田(右)と須磨学園・北山

三つどもえの戦いから諫早が遅れ、勝負は筑紫女学園・池田、須磨学園・北山のアンカー勝負に持ち込まれた。残り3.2キロで肩を並べてからは互いに一歩も譲らなかったが、1年の池田が残り80メートルの最後の直線でスパートし、決着をつけた。

最長6キロの1区は予想通り、諫早・藤永が抜け出した。筑紫女学園・長尾、須磨学園・藤岡里が後ろにつけるが、藤永は中間点の3キロ過ぎから登り坂を利用して引き離し、区間新の19分4秒で2年連続の区間賞。長尾、藤岡里もそれぞれ19秒差、21秒差と逆転圏内で粘った。

2区では須磨学園・多顔が1年生らしい思い切りの良さで差を縮め、残り400メートルで先頭へ。3区では再び諫早・田中が抜き返して先頭に躍り出たが、須磨学園・坂本、筑紫女学園・田橋も4秒差で続いて接戦を演出した。3強によるダンゴとなった4区はこれも1年の須磨学園・千本が中継所手前で抜け出すが、筑紫女学園・有田も2秒差で粘って逆転につなげた。

エース阪田を欠き、立ち上がり18位と出遅れた立命館宇治は底力を見せて4位までばん回、昨年優勝の田村は13位に入った。

ラスト100メートル“絶対勝てる”

両手を上げ、晴やかにテープを切った筑紫女学園の1年生・池田。ゴールした瞬間、泣き崩れた須磨学園の主将・北山。明暗を分けたのは、わずか1秒だった。

「ラスト100メートルで勝負する気持ちで。そうなれば絶対に勝てるから。」池田は前夜、主将の長尾からそう励まされていた。2秒差の2位でタスキを受けた時、プレッシャーは消えた。頭の中にあるのは長尾の言葉と「絶対に優勝するんだ」という思いだけだった。

もともと池田は、国体800メートル(1年生レース)でも優勝したスピードランナー。ラストのスピードには自信があった。だからこそ、北山は「早めに仕掛けてリードしたい」と何度も前に出ようとした。だが「死ぬ気でついて、ラスト勝負に持っていこう」という池田との優勝をかけたデッドヒートは競技場まで、もつれこんだ。

競技場に戻ってきた時、わずかにリードしていたのは北山。だが最初のコーナーを過ぎて池田が前へ。すかさず北山が盛り返す。そして、ラストの直線。北山の背後にピタリとついた池田が、「予定通り」に一気にスパート。北山の追い上げはほんの少し届かなかった。

長尾らが入学した年から3年計画で優勝を目指してきた筑紫女学園。「1区の20秒差なら逆転できる」と河村監督は指示していた。その言葉通り、諫早のエース藤永に19秒差につけた長尾は「自分だけのレースなら最初から無理しても藤永さんに追いつこうとしたはず。でも、優勝するためには20秒差以内と自分に言い聞かせて前半、抑えて走ったのがよかった」と振り返った。

「入学すると、みんなが優勝を意識しているのに刺激を受けた」と池田は言う。須磨学園は1、2年生が主力の若いチーム。優勝にかける意気込みが筑紫女学園の方が1秒分だけ勝っていたのかもしれない。

【木下 洋子】