女子第16回大会の記事

【毎日新聞社紙面より抜粋】

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諫早が3年ぶりV

歓喜の表情で優勝テープを切る諌早の高田鮎実
歓喜の表情で優勝テープを切る諌早の高田鮎実

諫早が最終5区でトップの興譲館を捕らえ、1時間7分33秒で3年ぶり2回目の優勝を果たした。アンカー高田(2年)が、区間1位の好走で興譲館を捕えた。

興譲館は6回目の出場で最高の2位。連覇を狙った須磨学園は3位。常磐が4位に入り、5回目の出場で初入賞を果たした。

■ レース評

1区新谷は11秒短縮区間新

諫早がアンカー勝負を制した。1区で6位と出遅れたが、中盤の2~4区を区間2~3位で走って徐々にトップとの差を詰め、11秒差の2位でアンカー高田にタスキをつないだ。高田は残り1.7キロ地点で興譲館・山本に並ぶと、残り1キロでスパート。最後は14秒差をつけてゴールした。

興譲館は1区の新谷が従来の記録を11秒縮める18分53秒の区間新でトップに立ち、その後も首位を維持。アンカー山本が諫早に競り負けながらも岡山県勢最高の2位に輝いた。連覇を目指した須磨学園は7人抜きをした2区の小林に続き、3、4区も区間賞を奪って追い上げたが、1区12位の出遅れが響き、3位にとどまった。前半の貯金を生かした常磐が、初入賞となる4位。一昨年優勝の筑紫女学園は、終盤粘りを欠いて5位に終わった。

諫早 最後に賭け的中 4日前に「アンカー」応えて高田力走

1位でゴールし抱き合って喜ぶ諫早の高田(右)
1位でゴールし抱き合って喜ぶ諫早の高田(右)

「前だけを見ていこうと決めていたから」。諫早のアンカー高田は並走する興譲館・山本の横顔をうかがうことはなかった。残り1キロ。「隣から弾む息遣いが聞こえてきた」と高田がピッチを上げると、山本に食らい付く余力はなかった。諫早が初めて単独で先頭に立った瞬間、勝敗は決した。

松元利弘監督は「1年前の悔しさがあった分、優勝への意気込みが他のチームより強かった」と声を詰まらせた。昨年はトラックの持ちタイムで差のない須磨学園に43秒差の2位。「ロード克服」の必要性を実感し、坂道対策を練ってきた。高田も西大路通りの上りでは「おなかに力を入れて」須磨学園の隅田を振り切ると、最後のスパートでは五条通を「足をリラックスさせて、放り出す感覚」で一気に下った。脇目も振らなかったのは、猛練習で身に着けた必勝法を固く信じていたからだ。

高田は6月中旬に右足の付け根を痛め、復帰は10月。今月21日の記録会でようやくスピードが戻り、松元監督は「逆転を狙うため」と4日前に2区からアンカーへの変更を告げた。「本当にびっくりした」と高田。それでも、試走と異なるコースを見事に攻略した。

1区の太田が冷静にペースを守り、金子、松本が猛追。予選を含め高校入学後初の駅伝となる1年生・松永が4区を区間2位の快走で駆け抜け、逆転の舞台を整えた。毎回、絶対的なエースを擁する諫早も「今回はエースは不在。だから、前の時(3年前)よりも、ずっとうれしい優勝です」と松元監督。目を潤ませる恩師の言葉を聞いて、ポーカーフェースで力走した高田も、泣き崩れるのを抑えられなかった。

【加藤 敦久】

◎ トピックス

「ナンバーワン」天真らんまん ― 新谷仁美(興譲館・2年)

トップで第1中継所に着き、喜びながらタスキを掲げる興譲館の新谷
トップで第1中継所に着き、喜びながらタスキを掲げる興譲館の新谷

一言でいえば天真らんまん。レース後はチームメートと大はしゃぎだ。とても2年連続1区区間賞、しかも藤永佳子(諫早)が5年前に作った区間記録を11秒も更新したランナーには思えない。だが、この落差こそ強さの秘密なのだろう。

残り500メートル。フィレス(山梨学院大附)にリードを奪われたが、あきらめない。「ここで離されるとチームがいい成績でも心から笑えないから」

押しも押されもせぬ日本人ナンバーワン。ただし、常に「日本人」という前書きがついて回った。フィレスには昨年の1区で勝ったが、今年は3戦全敗。高校総体でも国体でも「後ろから見てしまいました」。だから、もう負けられなかった。実業団との合宿。毎日の筋力トレーニング。上下動の少ない理想的なフォームに力強さが加わった。残り250メートル。こん身のスパート。タスキを両手で高々と掲げた。

諫早にかわされたアンカー山本(3年)と指切りをした。「何を話したの」と尋ねると首をかしげ、明らかにしなかったが、分かっている。チームは過去最高の準優勝。もう、約束することは一つしかない。

【千々和 仁】