女子第29回大会の記事

女子レース経過

1位でフィニッシュする仙台育英の木村梨七
1位でフィニッシュする仙台育英の木村梨七
 仙台育英が前半で大きくリードを広げて快勝した。トップと14秒差の7位で2区にたすきを渡すと、エカラレが1キロ手前でトップに立ち、3年連続区間賞で後続に34秒差をつけた。3区・鈴木、4区・武田とも安定した走りでリードを保ち、5区・木村は区間賞を獲得した。長野東は1区・和田が2年連続区間賞を取り、アンカーのトラック勝負も制して2位。大阪薫英女学院は1区17位の出遅れが響き、追い上げも及ばずに3位だった。

■ レース評

総合力、歴代2位記録

2区1キロ付近、長野東の高松を抜き、トップに立つ仙台育英のエカラレ
2区1キロ付近、長野東の高松を抜き、トップに立つ仙台育英のエカラレ
 女子歴代最高タイムまであと9秒。仙台育英が華々しく「名門復活」を成し遂げた。
 総合力の高さが際立った。1区で三浦がトップから14秒差の7位と好位置につけると、2区でケニア人留学生のエカラレが3年連続区間記録の離れ業を演じてトップに立ち、2位以下に34秒差の「貯金」を作った。
 それでも、釜石監督は「3、4、5区でも攻める」と発破をかけた。3区・鈴木は区間2位、4区・武田が同3位、そして、1年生アンカー・木村は区間賞でフィニッシュした。
 「日本の記録更新だけではなく、東京五輪に出たい」と掲げるエカラレの存在は大きいが、三浦が「留学生頼みと言われたくない」と強調したように、全体のレベルアップを図ってきた。今夏から5000メートル走やペース走の本数を増やし、今大会直前合宿では集団ではなく1人で走るなど、本番をイメージした練習で仕上げ。釜石監督はオーダーを5パターンほど考え、最終的に「トラック勝負になっても勝てる」布陣を組んだが、それは杞憂(きゆう)に終わった。
 仙台育英は2012年3月に有力選手男女10人が転校する騒動があり、翌年に女子は都大路で50位に沈んだ。釜石監督が12年4月に就任後、これまで都大路で一度も入賞できなかったが、地道な再建が今年に実を結んだ。宮城県予選で1時間7分30秒の全国トップタイムを出し、この日はさらに55秒縮めた。「この優勝をまた来年につなげられるように」。2年生主将の武田が栄光の継承を誓った。【前本麻有】

仙台育英・武田千捺主将、三浦瑠衣副主将

 仙台育英は、ケニア人留学生のヘレン・エカラレ選手(3年)が圧倒的なスピードで注目を集める一方、「日本人ダブルエース」として要になったのが、1区の三浦瑠衣副主将(3年)と4区の武田千捺(ちなつ)主将(2年)。2人は支え合い、時に競い合って、チームを23年ぶりの日本一に導いた。
 今年3月、釜石慶太監督が主将を打診したのは三浦選手だった。三浦選手は悩んだ。口下手で人前に出るのが苦手。2年生ながら、物おじせず実績もある武田選手に任せ、伸び盛りで人数も多い後輩たちを勢いづけたい気持ちもあった。「2年生が先頭に立ち、言いたいことを言える環境がチームへの刺激になる」。自分は副主将として支える側に回った。
 2年生主将という異例の大役に武田選手は戸惑ったが、三浦選手の思いをくんだ。しかし、チームメートの練習態度などはなかなか注意できず、結果が出ずに主将の重圧に押しつぶされそうになった。そんな時、「大丈夫だよ。一緒に頑張ろう」という三浦選手の言葉が励みになった。
 大会直前、三浦選手が1区、武田選手が4区のオーダーが決まった。武田選手は昨年の1区で出遅れ、リベンジを誓い練習を重ねてきた。それだけに悔しい思いもあったが、ほっとした気持ちもあった。「瑠衣先輩ならやってくれる」。試走で三浦選手の隣を走り、スタミナ配分のポイントや、レース運びの目印になる街灯や信号を教えた。三浦選手は武田選手の助言を念頭に、各校のエースがひしめく中、7位の好走で優勝を引き寄せた。
 フィニッシュ後、力強く抱き合った両選手。三浦選手は涙を拭いながら、「武田選手がいたから頑張れた。来年も強い育英を作って」とエールを送った。【本橋敦子】

◎ トピックス

甘い誘惑

 24日に幕を閉じた師走の風物詩の全国高校駅伝。取材の中で、監督や選手たちから「誘惑」という言葉を耳にした。
 「最近の高校生はお菓子への欲が特にすごい」。全国常連校の監督が渋い顔をした。寮生活の選手の両親から「仕送りにお金がかかる」と言われて調べてみると、月に2万~3万円を菓子代に費やしていたそうだ。甘い誘惑に勝てずに月10万円以上も使っていた女子もおり、月に6キロ太ったという。指導者が見ていないところでは自制できなくなる。食事が偏り、大会前に調子を落としてしまう選手は少なくない。
 23年ぶりに栄冠をつかんだ仙台育英の女子は体重管理を選手に任せる。釜石慶太監督(30)は「『自立』から『自律』できなければ本当の意味で強くならない」と自主性を説く。与えられたことだけをこなせても、日ごろから必要なことを考えて自ら実践していなければ、一発勝負で結果を出すことは難しい。セルフマネジメント力も求められている。【浅妻博之】