女子第31回大会の記事

女子レース経過

1位でフィニッシュする仙台育英の木村
1位でフィニッシュする仙台育英の木村
 3人が区間賞の仙台育英が総合力で上回った。1区終盤で小海が先頭に立ち、2区で3位に後退したが、3区の清水が区間賞の走りで逆転しトップ。4、5区でもリードを広げた。1区で14位と出遅れた神村学園は2区のバイレが13人抜きの快走。3区終盤まで先頭を守ったが、その後は仙台育英に引き離されて2位に終わった。3位は全員が区間順位1桁と安定の走りをした筑紫女学園。興譲館は2区・ワングイの10人抜きの活躍で4位に入った。青森山田はアンカーのエリザベスが区間1位の走りで5位に浮上した。

■ レース評

1区勢い、3区逆転

第1中継所手前で和歌山北の小倉を抜き先頭に立つ仙台育英の小海
 3区から4区につなぐ第3中継所直前。仙台育英の清水が優勝候補・神村学園の黒川を抜き去り、トップに躍り出た。「(神村学園に)10回に1回勝てるかどうか」と思っていた釜石監督が優勝を確信した瞬間だった。
 後半勝負を想定していた釜石監督にとって、2区間を残しての逆転はうれしい誤算だった。立役者になったのは1区を担った2年生の小海だ。5.5㌔付近で和歌山北の小倉と先頭に立つと、一度は引き離されながらも中継所直前で抜き、トップでたすきをつないだ。「勢いをつけるためにも区間賞を取りたかった」と小海。1区14位と振るわなかった神村学園に34秒差をつける快走だった。2区での後退は想定内。抜かれた神村学園との差はわずか6秒しかなく、実力者の木村を最終5区に配置した仙台育英にとっては、まさに理想的なレース展開だった。
 28回目の出場にして、初めて日本選手だけで挑んだ大会は新たな挑戦でもあった。エース格だったケニア人留学生のムソニが8月に右大腿(だいたい)骨を骨折。全治1年の重傷で、チーム内に暗い空気が広がった。釜石監督も、その後の合宿で「(都大路優勝の)目標を変更するか話し合ってくれ」と選手に伝えたほど。だが、選手たちがミーティングで出した結論は「優勝を狙う」だった。
 主将で5区の木村は「(ミーティング以降)目的意識を持って練習するようになった」と明かす。さらに学年の垣根を越えて話し合ったことで「仲間意識が芽生え、チームが一つにまとまった」。小海も木村からアドバイスを受けて、今月に入り1年ぶりに自己記録を更新するなど急成長した。神村学園に敗れ、連覇を逃した前回大会から丸1年。チームの危機を乗り越えた先に、2年ぶりの栄冠が待っていた。【大東祐紀】

神村学園、出だし遅れ

 神村学園が連覇以上に意識したのは、都大路の歴史を塗り替えることだった。「今までと違う勝ち方で(大会)記録にチャレンジした」と有川監督。高校総体1500㍍覇者のケニア人留学生、バイレを2区に起用して先行逃げ切りを狙ったが、出だしから連覇のシナリオに狂いが生じた。
 チームは仙台育英を徹底マークしていた。1区での差を10秒以内と想定していたが、木之下が遅れ、34秒差に。「緊張でメンタルをコントロールできなかった」と木之下。たすきを受けたバイレは快走したが、前半から飛ばしたために「最後1㌔がきつかった」。
 区間2位の力走でトップに立ったものの、設定タイムの12分15秒から10秒遅く、仙台育英との差は6秒しか広がらなかった。有川監督は「(バイレは)目に見えないところで力んでいた」と指摘した。
 全5選手が2年生。バイレの2区起用で生み出した「貯金」で、精神面での負担を減らす意図もあった。しかし、思ったより差がつかず、不安の連鎖を生んでしまった。
 アンカーの主将・中須は「来年は(他選手が)走っている背中を見たくない」。涙が乾いた後、目には闘志が宿っていた。【生野貴紀】