女子第34回大会の記事

女子レース経過

1位でフィニッシュする女子の長野東・村岡美玖
1位でフィニッシュする女子の長野東・村岡美玖
 長野東が各区間で安定した走りを見せた。1区の名和が先頭と6秒差の好位置につけ、4区の佐藤が区間賞の好走で2位に浮上すると、仙台育英と13秒差でたすきを受けた5区の村岡が2.7キロ付近でトップに立って逃げ切った。2位の仙台育英は2区のジェロップで首位に立ったが、アンカーで逆転された。優勝候補だった神村学園は1区で先頭と32秒差と出遅れたが、アンカーのカリバが追い上げて3位に入った。

■ レース評

◇競って成長、逆転初女王 5区エース的中

5区、長野東の村岡美玖(手前)が仙台育英の細川あおいをかわし、先頭に立つ
5区、長野東の村岡美玖(手前)が仙台育英の細川あおいをかわし、先頭に立つ
 過去2位が最高の長野東は、とっておきのエースを最終5区に配置した「チーム力」で逆転し、初の女王に輝いた。
 トップと13秒差でたすきを受けた5区のエース村岡美玖の頭には、先頭を追いかける考えはなかった。頭にあったのは、後ろにいる留学生だ。脅威の筆頭は4区終了時点でトップと1分15秒差があった神村学園のカリバ・カロライン。「留学生がすごく怖くて、全力で逃げるしかない」。2.6キロ付近で仙台育英の細川あおいに並ぶと、「1秒でも前へ」。トップに立ち、もう前に選手はいなかったが、前を追う意識で攻めた。区間で3位、日本選手ではトップの15分45秒でまとめ、逃げ切った。
 前回大会は1、2年生のみで7位入賞を果たし、年明けに今大会の目標を3位以内に定めた。3年間、都大路を走ることがなかった赤羽真衣佳主将(3年)は全員が目標を強く意識したことで、「心が体を動かした」と振り返る。個々が強み、弱みを自覚し、切磋琢磨(せっさたくま)できた。赤羽は「練習からの競り合いや、レースの中で小さいコンマ差であっても悔しがり、自分を奮い立たせられた」。
 チーム内での競い合いは全体の力の向上につながった。2年生の名和夏乃子が1区を任せられるまでに成長し、駅伝の経験値があって単独走でも力を発揮できる村岡を留学生が集まる5区に回すことができたのが大きかった。
 自信を持って大舞台に臨み、各区間を上位で確実につないだ。4区の佐藤悠花は区間賞の快走を見せた。25日はクリスマス。村岡は「クリスマスという実感はなく、都大路のためにやってきた」と言うが、長野東にとって最高のクリスマスプレゼントになった。【荻野公一】
 

◇仙台育英、全力2位 1年生アンカー「来年は1番、そして連覇」

 アンカーの1年生・細川あおいは涙が止まらず、タオルで顔を覆い続けた。2008、09年の豊川(愛知)以来となる連覇を逃した仙台育英。だが、6年連続で3位以内に入り、前回女王としての力は出し切った。釜石慶太監督は「長野東が強かった」と潔く勝者をたたえた。
 出場5人のうち唯一の3年生である主将の杉森心音(ここね)が、1区でトップと4秒差の2位と好位置につけた。2区で1年生のデイシー・ジェロップが先頭に出た。ジェロップがコース取りに手間取り、予想タイムより10秒ほど多くかかったのも想定内だった。4区まで全選手が区間2位と好走し、トップを堅持した。杉森は「やるべきことはやった」とうなずいた。
 5区の細川も長野東に逆転されたものの、この区間で日本選手2番目のタイムで戻ってきた。
 出場5人のうち1年生が3人、2年生が1人。経験を積むことで成長する余地は多いだろう。釜石監督は「来年から負けなしの3年間にできるくらい強くなって、京都に帰ってきたい」。涙を拭った細川は「来年入る1年生が良い。リベンジして、来年は1番。自分が3年生になった時は先輩が成し遂げられなかった2連覇を達成したい」と雪辱を誓った。【吉見裕都】