男子第12回大会の記事

【「全国高等学校駅伝競走大会 50年史」(全国高等学校駅伝競走大会実行委員会・2000年5月発刊)より抜粋】

現在の校名・旧校名一覧

小林が“完全”で連覇

1着アンカーの下別府のゴールイン
1着アンカーの下別府のゴールイン

前回に続いて大阪・浜寺公園の「毎日マラソンコース」が舞台。初出場8校と例年になく新鮮な大会となった。

スタート後まもなく冷雨に見舞われ、コンディションが心配されたが、レース中は気温12~13度、湿度54%と良好なコンディションとなった。その中を小林が1区から大きくリードして独走。予選で2時間12分14秒の高校最高記録を出した広島電機以下を引き離し、前年同様、終始トップを守る完全優勝で2連覇を成し遂げた。記録も2年連続の2時間14分を破る好タイムをマークした。

■ レース評

広島電機2位確保

第1区から小林の若松が飛び出す。中盤まで中京商・佐久間が続くが、若松のペースは落ちず、30分34秒で2年連続区間新記録の快走。2位の中京商に30秒、200メートル以上の差をつけて2区につないだ。以下、広島電機、鹿本、鴻城、磐田農の順で続く。

2区でも小林は1年生の丸山が頑張る。若松のつけた差をほぼ縮めることなく走り切った。2位以下の順位に大きな変動はないが、1区で出遅れた常盤が越生の5人抜きで区間賞を奪う力走で8位に浮上。

3区では向かい風が強まった。しかし、小林は1区の貯金が生きて危なげなく首位。中京商は白井がややブレーキで4位に後退。代わって鹿本が2位に躍り出、3位には広島電機の順で通過。

4区でも小林の勢いは止まらない。富満が区間賞を奪い、2位以下との差をさらに広げる。中京商が再び2位となり、以下、鹿本、広島電機、磐田農の順。

5区以降も小林は順調につなぎ、前回に同校がマークした最高記録に23秒及ばぬものの2時間13分40秒の好タイムで連覇を果たした。2位以下では、広島電機が5区・藤岡、6区・藤井、7区・二野宮と3区連続で区間賞を占めて2位を確保した。

若松、素晴らしい快走

2位をぐっと引き離して快走する小林・若松
2位をぐっと引き離して快走する小林・若松

レースは1区から7区までトップで押し切るという小林の完全優勝で終わった。もちろんこのきっかけをつくったのは若松である。1区の前半5キロを14分59秒で通過したときは、むしろ時計の見間違いではないかと思ったほどの快速で飛ばした。結局、30分34秒の大記録で2位を200メートル以上引き離して、三宝の2区へつないだ。これで九分通り優勝を決定したようなもの。3区と7区で今井、下別府がやや不調のほかは、全員実力以上で好走し、何の不安もない連勝ぶりだった。

予選で2時間12分台という高校最高を出した広島電機をはじめ、中京商など同じレベルのチームに追われる立場で完全優勝をやってのけた原因は、一にも二にも、一年を通じてのたゆまぬ激しい練習によることはいうまでもない。しかし、練習の点では他チームも同様であり、小林の勝因は、1区を30分台で走れる若松を作り上げたことにあろう。若松の記録は、現在日本の第一線に肩を並べる素晴らしいものであり、高校長距離界に与える自信は大きい。

2位となった広島電機は、とっておきの3区・竹井が、実力より1分下回るようでは優勝は難しかった。しかし、最終区間で二野宮が、ゴールあと1キロ付近から、先頭を行く小林を距離にして300メートル以内の視野に入れ、ぐんぐん追い上げた快走は見事だった。前半にこうした場面が見られなかったことは惜しい。

中京商は3位に落ちたが、1区・佐久間の2位進出から終始、小林をとらえ得る距離で押し切ったスピードのさえは見上げたもの。日ごろの練習はもとより、県予選もトラックという不利を押し切り、優勝を争った力走は印象に残った。

本大会は、大阪府警の並々ならぬ努力により、5月にアベベを迎えた毎日マラソンに比べ、沿道の交通整備は何一つトラブルがなかった。ともすれば交通量の激しい都会地で、批判の多い駅伝がこれほど見事に終わったことは、今後の駅伝のあり方に大きな指針を与えるものといってよいだろう。

【村杜 講平】

◎ トピックス

無事故へ伴走だめ

交通事故発生率日本一の大阪の国道26号を使って行われるだけに、競技委員や警察当局の気の使いようも尋常ではない。大阪予選で見事な交通規制をやってのけ、「百点以上」と折り紙をつけられた大阪府警は、さらにかぶとの緒を締めて白バイ20台を動員。レース中は大会関係車以外は随所で排除して選手を「護衛」した。関係車も大幅に制限され、報道陣も最近流行のマイクロバス1台で辛抱。監督の伴走も認められず、監督は7区間のうち一番心配な選手一人にだけ付き添う形になった。

合宿不要の体づくり

岸和田中継点で1位の小林・富満より山内(手前)にタスキリレー
岸和田中継点で1位の小林・富満より山内(手前)にタスキリレー

2連覇を果たした小林は若松監督の独特の体づくりが有名。学校、家庭一体の栄養補給、練習後の塩水によるうがいと手洗いの励行、毎月の定期健康診断など保健衛生に気を使う一方、頻繁な記録会で単調な練習にアクセントをつけ、ペースをのみ込ませるためカンの練習も忘れない。「合宿なんかやる必要ありません」と自信満々で臨んだ。