男子第30回大会の記事
中京商が初V
1位でゴールインする中京商の木村 |
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第30回大会は波乱のレースを勝ち抜いた中京商が2時間10分55秒で宿願の初優勝を果たした。1区は4位だったが、2区でトップに立つと、以後全区間を首位で突っ走り、2位・由良育英に12秒、約100メートルの差をつけて逃げきった。中京商は9回目の出場で初の栄冠。昨年の7位から頂点を極めた力走は見事だった。
30回の記念大会でブロック代表として復活した3位・美祢工、4位・九州学院の健闘が光った。優勝候補の福岡大大濠は1区・小山がスタート直後に転倒するアクシデントがたたり、38位。
■ レース評
福岡大大濠、転倒で38位
2位でゴールインする由良育英の松井 |
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波乱に満ちたレースだった。スピードランナーがひしめく1区は世羅の坂口が制した。中京商の米重は坂口からちょうど20秒差(約100メートル)の追い上げに絶好の位置をキープしたのがよかった。4位でタスキを引き継いだ中島は美祢工と萩をとらえてトップの世羅・原田にヒタヒタと迫り、中継点前でさっと抜き去った。以後、黒山、平岩、古川が無難につなぎ6区の堀之内へ。堀之内はリズミカルな腕の振りと大きなストライドで快調に飛ばす。2位に浮上した九州学院・日隈をじりじりと引き離し、中継時、わずか4秒差(20メートル)だったのを30秒差に水をあけた。「10秒以上あれば絶対負けない」と強気の1年生アンカー木村が逃げきった。中京商の区間優勝者は2区でトップに出た中島だけであることが、逆にほかの6人も平均した自力を発揮したのを如実に物語っている。
優勝候補の福岡大大濠は1区・小山の競技場で転倒するアクシデントで先頭の世羅から6分36秒(56位)遅れたのが命取り。2位の由良育英は4区の岡本が区間最高の快走で6位から2位に上がり、5、6区で3位に後退したが、アンカー松井が区間賞の力走で2位を奪回。3、4位には美祢工と九州学院が入った。
2区でスパート
徳重監督を胴上する中京商の選手たち |
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中京商のアンカー、1年生の木村がVサインでテープを切り、そのまま待ち受けていた徳重監督の胸の中に飛び込んだ。顔はくしゃくしゃ。小柄な監督に抱きかかえられ、何回もスタンドの歓声にガッツポーズで応えた。7人がそれぞれの持ち場で最高の力を出し切り、チームワークでもぎとった会心の勝利だった。
勝負どころは2区だった。西大路通から東へ、北大路通にさしかかるちょっと手前。中京商の主将・中島は眼前に1人の走者をとらえていた。泣きだしそうな雨雲の下、視界がぼやけ、ゼッケン番号も定かではなかったが、それがトップを行く世羅の原田であることはわかっていた。「よし、ここだ」。中島はスパートをかけた。差はぐんぐん縮まる。あと80メートル。ここで原田をとらえ、逆に100メートル差をつけて3区にバトンを渡した。その時の気持ちを中島はレース後、こう表現した。「1区の米重が4番できてくれたので、しめたと思った。絶対にトップに立って見せるぞ、と自分自身を励ましながら走った。このリードを最後まで守ってくれと、次の走者にバトンを渡すときは祈るような気持ちでした」
徳重監督はこのレースで一つのかけを行った。それは3区までで勝負をつけることだった。昨年は1区を走ったスピードのある中島を短い距離(3キロ)の2区に配して、1、2区合わせて13キロを一つの区間とみなし、先頭集団にくらいつく作戦だった。3区には3日前、38度の発熱で苦しみながら本人の「ぜひ走りたい」というたっての希望を入れ黒山を起用、これもあたった。
強豪がひしめく九州、中国勢をなぎ倒し、駅伝では兄貴株にあたる中京をもしのいでの初勝利。ずしりと重い優勝旗は今初めて美濃の里に旅立つ。
【今堀 二郎】◎ トピックス
21年ぶり快挙
近畿勢では報徳学園(兵庫)が健闘、堂々5位に食い込んで唯一の入賞チームとなった。兵庫勢では28回大会の9位の西脇工以来の入賞だが、報徳としては第9回大会(3位)以来21年ぶり。鶴谷監督は「1区の川崎が9位できてくれたのが上位入賞の原因。あれであとの選手がリラックスして走ることができた」という。入賞は目標だったが、「5位は出来すぎ。1、2年生が多いので、来年はさらに上位を狙う」と選手より監督のほうが感激の面持ちだ。
記録
スタート直後に転倒した福岡大大濠の第1走者・小山治選手は1区(10キロ)を完走後に倒れ、京都市北区の病院に収容された。心不全の診断だが症状は軽く、同夜退院した。