男子第32回大会の記事
報徳学園が初優勝
独走で初優勝、ゴールインする報徳学園のアンカー・平山 |
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報徳学園が鮮やかな独走を見せて2時間10分23秒で初優勝を飾り、近畿勢として第6回大会の飾磨工以来26年ぶりに頂点に立った。1区でトップの埼玉栄とほとんど同時の3位で2区にタスキリレー。2区ではトップを奪い、4区では300メートル差とし独走態勢に入った。鳥栖工の追い上げにあったが、報徳学園アンカー平山がハイピッチで突き放してゴールイン。
このほか清風が4位に入るなど、近畿勢の健闘が光った。優勝奪還を目指した九州勢は、鳥栖工が46秒差で2位、九州大会で2時間7分57秒の高校最高記録を出した福岡大大濠は6位に終わった。
■ レース評
報徳、2区から独走
2区で報徳学園・植田[28]が埼玉栄・石下[11]を一気に抜き独走へ足がかりをつくった |
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1区4キロ付近でトップ集団から抜け出したのは埼玉栄・大庭。わずかに遅れて報徳学園・北垣、四日市工・愛敬、保善・窪田、清風・吉田、世羅・丸山らが続き、優勝奪還を狙う九州勢の福岡大大濠、鳥栖工、小林などはさらに遅れる。
2区中継点で埼玉栄にタッチの差でタスキを受けた報徳学園・植田は1.8キロ地点で埼玉栄・石下を一気に抜き去り、たちまち50メートル差。堀川通に差しかかったところで70メートル差に開いた。中京商・中井が追い上げ、2位グループは清風、埼玉栄、保善、美祢工。さらに遅れて小林、鳥栖工。これに福岡大大濠が続いた。
昨年の経験者5人がいる報徳学園の快走は続き、折り返し点では2位集団の清風、世羅、中京商、保善、鳥栖工、福岡大大濠、との差は200メートルとなった。
鳥栖工は6区・北島が報徳学園を追い上げ、差を300メートルから200メートルに縮めて最終7区へ。報徳学園・平山を視界にとらえて懸命に追い上げる鳥栖工・伊東。しかし、平山は力強いピッチでその差を開き、西京極陸上競技場のゲートをくぐった時は約300メートルに開いていた。
波に乗り自信のゴール
1区スタート直後の先頭集団 |
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両手を上げて感激のテープを切った1年生のアンカー平山を報徳学園の各選手が出迎え、涙を流して抱き合った。“7人の喜び”が一つになって、第1コーナー前に広がった。そのさわやかな充実感あふれる喜びは、7人が持てる力を出し切った報徳学園の強さでもあった。
1区で北垣がトップと2秒差の3位でムードを盛り上げ、2区の1.8キロ地点で主将の植田がトップを奪い、あとは波に乗って2位以下をぐんぐん引き離した。「あんなレースをされたら監督はいらないですよ」と鶴谷監督は満足そうに笑うが、手塩にかけた選手たちの実力を再認識したことだろう。
本番前夜のミーティングで、鶴谷監督の話は「とにかく自信を持って思い切って行け」という短いものだった。「最高に仕上がっていたし、普段の力を出し切ればよいと思った。福岡大大濠や鳥栖工のことなんて考えたこともありませんよ」と植田主将はケロっとした表情。もちろん、5,000メートル14分台の選手6人を中心に連日トラックを使ったスピード練習と15―20キロの走り込みで力を磨いた自信があるからだろう。
それにしても、選手は落ち着いていた。昨年の大会経験者が5人も残っていることが、大舞台で見事に生かされた。「魔物みたいな独特のプレッシャーに負けなかったのは、経験者がいたためだ」とくちびるをかむ福岡大大濠・大野和夫監督の言葉が、報徳学園の会心のレースを証明していた。
大優勝旗は第6回大会の飾磨工(兵庫)以来26年ぶりに近畿の地にとどまる。「来年こそ優勝を狙う」と福岡大大濠と鳥栖工の九州勢が再起を誓っていたが、新旗手となった鶴谷監督は「また、いつも通りやるだけですよ」。スケールの大きいチームが頂点をきわめたものだ。
【玉置 通夫】◎ トピックス
火事で優勝旗が灰に
報徳学園が持ち帰った優勝旗が、翌年3月18日夕に起きた同校体育館全焼の火事で焼失した。体育館2階の教官室に置かれたまま、運び出すことができなかった。優勝旗は前年夏の全国高校野球選手権大会の優勝旗とともに、神戸市内の銀行の金庫に保管してあった。だが、2月初め、陸上部の卒業生送別会の席に飾るため、駅伝の優勝旗だけ同校に持ち帰られ、送別会後は体育教官室に保管されていた。