男子第36回大会の記事
報徳 史上初の3連覇
ゴール前、八幡大付・有馬(右)を抜いて3連覇のゴールインをした報徳学園・西尾 |
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まれに見るデッドヒートの末、報徳学園・西尾が残り100メートルでスパート、八幡大付を2秒差で振り切る2時間6分43秒の驚異的な全国高校最高、大会新記録で、3年連続4回目の優勝を飾った。3連覇は史上初。兵庫県勢は5連覇を達成した。
高校駅伝で2時間6分台が出たのは初めてで、八幡大府も全国高校最高、大会新記録をマークした。2秒差の優勝は第7回大会(1956年)以来29年ぶり2回目の最短タイム差。区間賞なしの優勝は、第24回大会(73年)の小林以来12年ぶり5回目だった。3位は世羅。初出場の市船橋が4位に入った。
■ レース評
最後の100メートル 報徳爆発
“花の1区”を力走する仲村(市船橋[12])らの先頭集団 |
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1区は予想通り、ハイペースの展開に。仲村(市船橋)が1位で2区へ。水戸工、世羅、報徳、秋田中央、八幡大付の順で中継したが、市船橋と八幡大付との差はわずか14秒だった。しかし2区で世羅が遅れ、逆に報徳は浅井の力走で2位に浮上、約25メートル差で3区へつないだ。世羅は5位に落ち、八幡大付が4位へ食い込んできた。
3区では秋田中央が20位に後退。八幡大付が中本の力走で首位に並び、報徳、八幡大付、市船橋のトップ争いに。残り0.9キロで中本がスパート、報徳・岡川に約35メートルの差をつけ4区へつないだ。3位に愛工大名電が入り、市船橋が4位、世羅は6位。
4区で世羅の金川が区間賞を取り3位へ。7.3キロでスパートした報徳・佐田がトップ、八幡大付・樋口が5メートル差で続いた。ここで首位争いは、報徳と追う八幡大付、世羅に絞られたが、2位は5区で世羅、6区で八幡大付に。
そして7区は、八幡大付・有馬が約80メートル差をみるみる縮め、3キロすぎでついに報徳・西尾をかわした。しかし、西尾はわずか1メートルの差を守ったまま陸上競技場へ。最後の100メートルでスパート、逆転した。
『負けないレース』本領
報徳学園が「負けないレース」を存分に見せつけ、史上初の3連覇の偉業を2時間6分台の驚異的なタイムで成し遂げた。レース内容も高校駅伝史を塗り替えるに十分な展開だった。報徳の本領は、やはり最終区間の7区にあった。
タスキが報徳のアンカー西尾に渡って15秒後、八幡大付の有馬がすごい顔つきで追撃を開始した。約80メートルあった差はどんどん縮まる。あと2キロで西尾をつかまえ一気に追い抜きをかけたが西尾も食い下がる。
この時、西尾は既にトラック勝負になると読んでいた。「追いつかれたら最後の100メートルで勝負を付けようとレース前から思っていた。それまでは引き離されないことだけを考えた」。有馬は「追い上げた勢いで一気に前に出たかった」と振り返る。有馬は「早く勝ちたい」と焦り、西尾は「最後は負けない」と我慢を決め込んだ。
約300メートル並走して有馬は再びスパートをかけたが、西尾は独走を許さない。そして西尾は予定通り、トラックの直線コースに入るや、たった一度のスパートでものの見事に決めた。前半のオーバーペースと、勝ちを意識しすぎた有馬の早い仕掛けが残り100メートルで明暗を分けた。
高校駅伝史上最高といわれる報徳の強さは、選手それぞれが“ひとり旅”に絶対といえる力を発揮することだろう。7選手全員が本番まで4回の試走をした。各自が全くばらばらに自分の受け持ち区間を調整する。レース当日も各区間のゴール時間に合わせ、自分なりに宿舎を出る。それぞれが自分の区間に責任を持ちペースを作り上げていくのが、報徳のここ数年の調整方法。他チームの追い上げ、競り合いにも動じず、あくまでもマイペースで走り抜く選手たち。
鶴谷監督は「すごい生徒ですよ」と号泣した。“区間賞なしの優勝”は、この5年間に4度優勝した報徳にとっても初めてのこと。最も報徳らしいレースだった。
【石井 修】◎ トピックス
連続1区区間賞ならず
昨年、2年生ながら1区区間賞に輝いた秋田中央のエース池田が、史上4人目の2年連続1区区間賞を狙ったが、区間5位に終わった。市船橋の仲村とともに先頭集団を引っ張ったが、予想以上のハイペースに8キロ過ぎから脱落。タイムも昨年の30分13秒に届かない30分22秒と振るわなかった。「調子が良ければ29分台で走りたい」と意欲を見せていただけにショックは隠せないようだった。
記録
報徳学園が2時間6分43秒、八幡大付が2時間6分45秒でマーク。これまでの記録は高校最高、大会記録とも第34回大会で報徳学園が出した2時間7分4秒。
区間新記録
4区で23分41秒の金川英司(世羅)ら5人が、7区で有馬啓司(八幡大付)が14分34秒で記録。