男子第44回大会の記事
仙台育英初の男女V
1位でゴールインする仙台育英の北浦 |
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第44回大会はケニア人留学生を擁する仙台育英が男女とも初優勝を飾った。2年前に男子の大牟田、女子の筑紫女学園の福岡勢が同時優勝した例はあるが、同一高校が男女を制したのは史上初の快挙だった。
男子は1区でジェンガがトップに立った仙台育英がリードを保ち、2時間5分25秒の高校歴代4位の記録でゴールイン。浜松商が静岡県勢初の2位に入り、3位の西脇工は連覇を逃したものの、5年連続の入賞。6位に食い込んだ中京商は20年連続出場を8年ぶりの入賞で飾り、徳島東工は徳島県勢初の8位入賞を果たした。
■ レース評
10年ぶり終始トップ
スタート直後から一気に飛び出す仙台育英、ジェンガ(先頭左)=西京極陸上競技場で |
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仙台育英が10年ぶりに終始トップでゴールした。スタート直後からジェンガが飛びだし、中間点で後続集団に100メートル以上の差。7.5キロすぎ、後続の大集団は大牟田の村上がスパートして8校の固まりに。残り500メートルで宇治の渡辺と東海大三の西沢が抜け出し、ラスト勝負で西沢が先行し、ジェンガに60メートル差まで迫りタスキを渡した。
2区では中京の石川が5人抜きで2位に浮上したが、仙台育英もソツなくつないで先頭との差は変わらない。3区で仙台育英のマイタイがバネのある走りで2位以下との差を拡大。中京が2位でつないだが、トップとは200メートル以上の差。3位の清風の後、ともに10人抜きした浜松商、中京商が大牟田をはさんで秒差で続いた。
4区以降の仙台育英は常に200メートル以上の間隔を保ち、危なげなく逃げ切った。後続の順位は目まぐるしく変わったが、アンカーで2人を抜いた浜松商が初の2位。4、6区の区間賞で3区の18位から追い上げた西脇工が3位。中盤で2位を保った中京は最後で4位に転落した。
“貯金増やせ”と伸びのび快走
仙台育英の4区・中村はタスキを受けてすぐに思わぬ光景を目の前にして驚いた。前半を終了したチームと、これから折り返し点に向かうチームが正面向きですれ違う唯一の場面だ。最大のライバルと見られた西脇工の走者がなんと18位、トップを行く自分たちのチームと2分以上の大差がつき、あえぎながら走っている姿だった。
今大会の優勝を占う最大のポイントはこの地点だった。1、3区に高校総体優勝のケニア留学生2人を配し、先行逃げ切りをはかる仙台育英と、飛び抜けた選手はいないものの、総合力で優位に立ち、後半での逆転を狙う西脇工。その逆転の可能性を探るポイントが前半終了時点でのタイム差だった。「2分差がつけば、あきらめざるを得ない」と言っていた西脇工・渡辺監督の悪い予感は的中してしまった。
中村は快調に飛ばした。中京、大牟田などの強豪校が追いかけ、中村はややオーバーペースの滑り出しだったが、中間以降は「もう負ける敵はいない」と心を切り換え、冷静な走りを取り戻した。5,000メートル14分36秒の記録を持ちながら、今夏、右足の疲労骨折で3ヵ月間、練習を休んだ。両外国人選手の陰に隠れていたが、チーム3番目の走者としての意地をレースにぶつけた。2位・中京との差は43秒から1分3秒へと大きく開き、初優勝への大きな布石がここで打たれた。
「貯金をもっと増やせ」。波に乗った仙台育英の選手たちは、伸びのびとした走法で独り旅を続けた。6区の浅野主将は「駅伝は7人全員がしっかり走らなければ勝てない。ぼくら後半のメンバーは自分の区間で必ず勝つ気持ちでこの1年間準備し、力いっぱい走った」と言った。ジェンガ、マイタイの超高校級パワーと駅伝独特のチーム力が見事に引き出した仙台育英の圧勝だった。
【石井 修】◎ トピックス
仙台育英がアベック入賞
ケニアから入学した選手を擁した仙台育英が、男女アベック入賞。4位となった男子の二階堂監督は「子供たちがよくやってくれた」と初の入賞を喜んだ。エース溝井の故障で2区に起用された北浦は緊張から前日に39度の発熱。二階堂監督は「何とか県大会の記録(2時間7分3秒)だけは破りたい。順位のことは考えていなかった」という。だが、1区のマイタイから7位でリレーされた北浦は、区間21位ながら順位を一つ上げてジェンガへ、ジェンガが区間賞の走りで2位へ出て、入賞の足場をつくった。「うちはまだまだ経験不足。この成績が来年の励みになる」と、二階堂監督はさらなる飛躍を誓っていた。