男子第46回大会の記事
西脇工『これが駅伝』
2連覇のテープを切る西脇工の角友 |
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舞台を都大路に移し30年目の男子は西脇工が、逆転で2連覇を達成した。1区でジュリアス・ギタヒ(仙台育英、ケニア)が従来の記録を1分以上も短縮する27分48秒の区間新で滑り出したが、西脇工は3区から3連続区間賞の好走で逆転。史上8校目、9回目(小林が2回、報徳学園の3連覇を含む)の連覇を達成し11回目の出場で5回目の全国制覇を遂げた。
2位の田村は福島県勢最高順位に。3位の大牟田は3年連続の入賞で、5位徳島東工も県勢トップの成績。25校が2時間10分を切り、また1位と最下位のタイム差も初めて10分以内になり、“スピード駅伝”は一層レベルアップした。
■ レース評
田村、競り勝って2位
集団から一気に抜け出し、独走態勢をとる仙台育英・ギタヒ=1区1キロ付近で |
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大きく先行した仙台育英を、総合力で上回る西脇工が追う展開となった。仙台育英の1区・ギタヒはバネの利いた走りで立ち上がりから飛ばし、区間記録を1分9秒も更新。2位・浜松商、3位・西脇工もよく追ったが、約1分30秒差がついた。
2区は、浜松商が1分10秒差に追い上げたが、仙台育英は独走状態のまま。西脇工は、体調を崩した奥田が遅れる誤算で、仙台育英との差は1分54秒にまで開いた。
西脇工の巻き返しが始まったのは3区。徐々に追い上げ、5キロ付近で浜松商をかわして2位に浮上、トップとの差を1分30秒に戻した。4区が勝負のポイントになった。西脇工・岡田は前半を抑えて後半に一気のペースアップ。仙台育英は大宮が終盤に疲れ、差は9秒に縮まった。以降は、地力の違いをみせつけるレース運び。5区でトップに立ち、6区で独走に持ち込んで逃げ切った。大差をつけられても自分たちの走りを見失わなかったのが勝因となった。
7区で、3位争いの田村、大牟田が追い上げ、競技場手前で仙台育英を捕らえた。ラストのスパート勝負で、田村が2位、大牟田が3位。仙台育英は層の薄さが出て4位に終わった。
最大1分54秒差も『なんの』
5区2.4キロ付近、仙台育英の菅原(右)をとらえて抜き去る西脇工の岸本 |
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西脇工の渡辺監督は不安を抱えていた。2区に起用した1年生の奥田の様子が早朝からおかしい。風邪で39.2度の高熱があった。選手変更も考えたが、ムードを変えたくない。「走らせて下さい」との本人の申し出に、渡辺監督は奥田のレース出場を決意した。
1区の前田は3位。ギタヒとは1分33秒差。渡辺監督が勝つ目安にした「1区で1分30秒差」に沿う展開だった。2区で10秒、3、4区で20秒ずつ差を詰めれば終盤でかわせるという狙いだったが、気がかりな奥田の走りはやはり重かった。差を縮めるどころか、中継直前にタスキを落とし、拾おうとして倒れかける最悪の状態。逆に差は1分54秒に開き、勝算は大きく狂った。
前田は「だめだと思った」と言う。ブレーキがあれば、焦って後続区間に悪影響を及ぼすからだ。それでも「タスキをつないでいったら、勝てると信じていた」という3区の黒田は2番手に上がり、1分30秒差に戻した。4区の岡田は「届かないだろう」と半ばあきらめながら、2キロまでは自重した。追われる側もつらい。仙台育英の大宮は後ろの敵を気にし過ぎて、序盤から飛ばし、後半、足が重たくなった。ピッチを上げた岡田との差が徐々に詰まった。精神面で立場が変わり始めた。
残り2キロで差は30数秒。5,000メートルのタイムで大宮を25秒上回る岡田の脚力が生きる流れだ。
一直線の丸太町通に入り、大宮の背中がはっきり見えると、岡田の走りは一層軽くなった。間隔は一気に詰まり、中継所ではわずか9秒差。ギタヒ以外では個人記録で圧倒する西脇工には、なきに等しい差。5区2.4キロで岸本が菅原をかわし、西脇工は連覇に手をかけた。
「負けると思った。すごい精神力を持った子供たちです」。渡辺監督自身が驚いていた。ケニア人留学生が登場してから、他校は見えない敵を追いかける難しさを常に突き付けられている。これを西脇工は2年連続で克服した。けた外れのペースに惑わされず、タスキを継ぐごとに大差を縮めていった勝ち方は前回と同じ。駅伝の心を体現するような連覇である。
【堂馬 隆之】