男子第50回大会の記事
仙台育英アンカー勝負を制し6年ぶり復活
西脇工・野々村をかわし、こぶしを突き上げゴールインする仙台育英・江村 |
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5年ごとの記念大会で地区代表11校を加えた58校が参加した男子は、仙台育英が最終7区のトラック勝負の末、史上2校目の3連覇を狙った西脇工を2秒差で振り切り、6年ぶり2回目の優勝を飾った。ケニア人留学生・ワイナイナ(仙台育英)が1区で史上初の3年連続区間賞を獲得。
超高校級ランナー佐藤清治を擁した佐久長聖は前年の初出場4位から3位へ。埼玉栄は後半の粘りに欠け4位。報徳学園は終盤の追い込みで5位。優勝候補の大牟田は4区のつまずきが響き8位に後退した。美馬商は10回目の出場で初入賞の6位。兵庫県勢の連覇は5年で途切れた。
■ レース評
報徳学園、大牟田 実力発揮できず
仙台育英が終始、粘り強い走りを演じてトラック勝負にもつれた激戦を制した。
1区・ワイナイナはスター卜直後から独走し、後続を1分余り離した。3区・木村は腹痛もあって3位に下がったが、4区・佐々木が終盤に追い上げて先頭・西脇工に2秒差の2位に迫り、5区・村上が中継所手前のスパートで首位へ。7区・江村も1キロ過ぎから続いた西脇工との並走を落ち着いてしのぎ、ゴール前60メートルから一気の加速で振り切った。自己のペースを守り、タスキを引き継ぐまで全力を尽くす姿勢が全員に徹底され、実に見事なレース運びだった。
西脇工は1区・藤井が3位につけ、3区・中谷が49秒差を逆転して先頭に立つまでは順調。しかし4区以降で、中途半端なスパートや、後続を気にして振り返る場面が度々あり、全体に集中力を欠いて力を出し切れなかった。
佐久長聖は、先頭から43秒差の4位で引き継いだ7区・佐藤清が後半疲れたものの、全員が安定し着実に順位を上げて過去最高の3位。報徳学園は前半、大牟田は4区の遅れが響いて優勝争いにからめなかった。2時間8分以内が17校、同10分以内が33校はいずれも史上最多。全体のレベルアップも目立った。
“ニュー仙台育英”2秒差V 粘って西脇工V3阻む
5区2キロ付近で互いにけん制しあいながらトップをうかがう西脇工・古川(左)、埼玉栄・井上(中央)、仙台育英・村上 |
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忍び寄る超高校級ランナー・佐藤清冶(佐久長聖)の影。西脇工のアンカー・野々村は幾度となく後ろを振り返った。だが、仙台育英の江村はしっかりと前を見据えたままだ。「佐藤さんはまったく気にもならなかった。頭の中は西脇工だけでした」
競技場内でもデッドヒートは続く。江村は最後の直線で満を持してスパート。残り60メートル。野々村も最後の力を振り絞って粘るが、神経をすり減らし余力が残っていない。どよめきと歓声が入り混じる中、江村が先にゴールに飛び込んだ。粘りに粘った仙台育英の勝利だった。
最近の仙台育英の戦いぶりは、最長1区で留学生がけた違いの力を示すものの、中盤以降はずるずると順位を落とす展開ばかり。今年もワイナイナが3年連続で1区区間賞を獲得し2位・白石に1分3秒の大差をつけたが、その差はどんどん縮まっていった。腹痛に苦しんだ3区・木村が西脇工にかわされ、3位に後退した。だが、今年はここからが違った。
4区の佐々木が大きなストライドで追い上げ開始。7キロ付近で先行する西脇工・田中に並びかけて驚かせる。続く5区では村上が残り1キロからのラストスパートで西脇工・古川に粘り勝ち。6区は河野が相手の仕掛けに食らいついた。どの区間でもスピードランナーがそろう西脇工に一歩も引かない粘りだった。
この粘りはどこからくるのか。渡辺監督の答えは単純明快だった。「原点に返り、基本をしっかりやった」。埼玉栄で優勝経験のある渡辺監督が就任したのが今年2月。以来、練習が量より質に変わる。クロスカントリーとトラックでの走り込みでフォームを固めた。「先生の指導通りにやれば、なんでもそうなる」と主将の木村が言うように渡辺監督の指導に選手たちは引き込まれていった。まだ3年計画の初年度。「あまりにも早く優勝しすぎた」と苦笑いするが、留学生一人に頼らない走りからは、来年以降の強さが垣間見えた。
【中田 博維】