男子第56回大会の記事

【毎日新聞社紙面より抜粋】

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仙台育英3連覇

1位でゴールする仙台育英の渡辺
1位でゴールする仙台育英の渡辺

仙台育英が、2時間5分4秒で3年連続6回目の優勝を果たした。3連覇は第36回大会の報徳学園以来史上2校目。仙台育英は42秒差で先行する世羅を4区でつかまえ逆転、5区以降もリードを広げて、これまで報徳学園しか成し得なかった3連覇を達成。93年の第44回大会で初優勝して以来、優勝回数も6回と報徳学園に並ぶ歴代3位タイとなった。

2位は大健闘の世羅で、8年ぶりの入賞。昨年2位の豊川工は3位にとどまった。

■ レース評

世羅 序盤のリード守れず

第4中継所で世羅をかわし先頭に立つ5区の仙台育英・棟方
第4中継所で世羅をかわし先頭に立つ5区の仙台育英・棟方

序盤は世羅がリード。1区ギタウが7キロ過ぎから逃げ、2区松本も区間賞。3区大林もペースを乱さず、仙台育英に42秒差で4区へ。

1区から2位につけた仙台育英は4区佐藤がじっくりと追い、中継直前で世羅をかわして首位へ。5区棟方がリードを広げ、6区釜石が世羅を43秒差まで離して勝利を決定的にした。

世羅は4区以降も安定して2位を守った。豊川工は3区三田で3位に浮上したが、勝負どころで先頭を追えなかった。続く混戦から佐久長聖が5区で抜け出し、4位に入った。

不調や失速の選手が出て実力を出し切れないチームが上位にも多かった。そのため記録は低調。最近10年間の中では、優勝と3位の記録は8番目、8位の記録は最低だった。

仙台育英42秒差逆転 底力 主力故障にもあわてず

1区3キロ付近で競り合う世羅のギタウ(左)と仙台育英のジェル
1区3キロ付近で競り合う世羅のギタウ(左)と仙台育英のジェル

渡辺監督いわく「ハラハラ、ドキドキ」の3連覇だった。トップの世羅に42秒差をつけられてタスキを渡した3区の日本人エース梁瀬は「優勝を逃したら敗因は自分だな」と覚悟した。

1区にジェルを起用。「先行逃げ切り」が仙台育英の作戦だった。しかし、2区川上が区間23位の誤算。想定外の世羅にリードを許したうえ、股関節に不安がある梁瀬に左足の力が入らなくなるアクシデントが襲う。レース後には左足を引きずるほどの“重傷”だった。

梁瀬の調子が思わしくないと踏んでいた渡辺監督は「タスキを持って来てくれればいい」と声をかけていた。だが故障までは想像していない。さすがに焦った。窮地を救ったのは4区の佐藤だった。「トップで来ると思っていた」と明かすが、焦りはなかった。2年生だった昨年は右足の故障でメンバーに入れなかった。最後の都大路。オーバーペースに気をつけながら、冷静に差を詰めていった。

「自分でトップに立つ」という佐藤の強い気持ちが表れたのは、第4中継所手前。先にタスキを外して右手に握りしめたのは、先行する世羅の中原ではなく、佐藤の方だった。歯をくいしばってのラストスパート。5区の棟方にタスキをつなぐ寸前、ついに世羅を抜いた。

チームの誰もが3連覇を確信した瞬間だった。昨年は大会新記録の2時間1分台で制覇した。その主力が抜けた「谷間の年」に、エース格の故障を乗り越えてつかんだ優勝。渡辺監督は「大きな財産を得た」と感じている。「5連覇ぐらいはいくと思う」。選手への絶大な信頼感が生んだ言葉だった。

【堤 浩一郎】

◎ トピックス

古豪復活へ 世羅躍進2位

出場35回の名門・世羅が昨年の25位から2位に躍進し、復活の足掛かりをつかんだ。前回は故障欠場した留学生のギタウが1区で仙台育英のジェルを抑えて区間賞。2区の松本主将も区間賞を奪い、チームを勢い付けた。「トップでタスキを受けた時は緊張したが、仙台育英との差を広げようと必死だった」と松本。5区への中継直前まで首位をキープし、終盤も粘って2位を守り抜いた。第1回大会を含め優勝4回を誇る伝統校だが、近年は低迷。97年の6位を最後に入賞から遠ざかっていた。「高校駅伝界から忘れられた存在などと言われ、悔しい思いをした」と岩本監督。学校創立110年の来年は32年ぶりの頂点を狙う。