男子第58回大会の記事

【毎日新聞社紙面より抜粋】

現在の校名・旧校名一覧

仙台育英 史上初 同タイム決着

佐久長聖の堂本(右)を振り切り1位でゴールする仙台育英の橋本
佐久長聖の堂本(右)を振り切り1位でゴールする仙台育英の橋本

昨年、史上初の4連覇を阻まれて2位に終わり、涙をのんだ仙台育英が、トラック勝負の末、2時間3分55秒で2年ぶり7回目の優勝。佐久長聖も同タイムで2位に入った。

優勝、準優勝の同タイムは大会史上初。仙台育英は3区クイラ(2年)が9人抜きでトップに浮上。6区で佐久長聖に追いつかれたが、7区の橋本(3年)が競技場で佐久長聖・堂本(3年)との競り合いを制した。優勝回数7回は小林に並ぶ歴代2位。上位2校が2時間3分台をマークしたのは、6区間32キロで争った第1、2回大会を除いて史上初めて。2位には佐久長聖、3位は後半追い上げた西脇工。

■ レース評

仙台育英 3区クイラ一気に奪首

3区でクイラが快走した仙台育英と、安定した力の佐久長聖によるアンカー勝負となり、トラック内までデッドヒートを続けた。最後はゴール前で仙台育英の橋本が佐久長聖の堂本を振り切った。

仙台育英は1区で14位と出遅れたが、2区で山野が区間3位の力走で10位まで上げ、3区のクイラが区間2位に44秒の大差を付ける快走で一気に先頭に立った。

佐久長聖は3区以降は区間3位以上の走り。3区で23秒あったトップとの差を、4区で13秒、5区で4秒と縮め、6区で並んだが、後一歩だった。

連覇を狙った世羅は1区でカロキがトップに立ったが、3区の鎧坂が欠場するアクシデントもあり中盤に失速した。予選タイムトップの西脇工は、1区の八木が10位と出遅れ、終盤に挽回したが、3位だった。

同タイム決着 勝負の歴史塗り変えた

7区3.8キロ付近で激しく競り合う仙台育英の橋本(左)と佐久長聖の堂本
7区3.8キロ付近で激しく競り合う仙台育英の橋本(左)と佐久長聖の堂本

男子の仙台育英と佐久長聖による同タイムでの優勝決着は、58回目を数えた大会史で、初のケース。過去には、第40回記念大会で、報徳学園、西脇工による同一県同士の1秒差でのワンツーフィニッシュが強烈な印象を残した。大声援のトラック勝負で一度は西脇工・結城が前に出たが、報徳学園・村松が第1コーナーで抜き返す。最後の直線で突き放した村松がゴールテープを切った。ともに当時の高校記録を塗り替えるハイレベルな決着だった。近年では、第50回大会で2秒差、第51回大会で1秒差と2年連続で激戦となったケースも。女子では、第11回大会に筑紫女学園が須磨学園を1秒差で破っている。

◎ トピックス

仙台育英 接戦対策ズバリ

競技場までもつれたアンカー勝負。仙台育英の橋本は冷静に隣の佐久長聖・堂本の動きを注視していた。トラックに入って100メートル付近で堂本の動きが緩んだと見ると迷わず前へ。食い下がる堂本を振り切ってゴールへ駆け込んだ。橋本は言った。「トラック勝負になると監督に言われていたから焦らなかった」

前日に渡辺監督は、クイラを1区から3区に変更。接戦を予想し、ライバルに重圧をかけるために、あえてエースを中盤に配した。代わりに1区を任された上野と、クイラは試走できないまま本番を迎えることになったが、この作戦がピタリとはまった。

上野はトップから約1分差の14位でしのぎ、3区のクイラが9人を抜き去って先頭へ。6区で佐久長聖に並ばれたが、トラック勝負は織り込み済み。

「だから一番スピードのある橋本をアンカーに使った」と渡辺監督。その橋本の長所が最後の最後で物を言った。

今年で60歳になる渡辺監督はレース後、「定年だし、それが世の常だからこれで最後」と監督の座を退くことを明らかにした。大会を前に主力4人が故障を抱え、調整は順調ではなかった。それでも、最後だからこそ勝つために策にこだわった。

主将の棟方は「区切りを迎えた監督を胴上げしたかった」。選手は指揮官の思いに走りで応えて見せた。「思った通りに選手が走ってくれた。監督冥利に尽きる」。すべてが渡辺監督のシナリオ通りに進んだレースだった。

【平本泰章】

留学生 男女とも3人

スタート直後に先頭集団から抜け出す世羅のカロキ(右)と山梨学院大付のコスマス
スタート直後に先頭集団から抜け出す世羅のカロキ(右)と山梨学院大付のコスマス

外国人留学生は今大会で出場したのは、男女ともケニア出身の3人。起用制限が議論されている1区には、いずれも2人が走り上位を占めた。

男子1区はカロキ(世羅)とコスマス(山梨学院大学付)が先行していたが、ペースは例年より抑えめ。区間賞のカロキは29分19秒で、98年以来9年ぶりに29分台にとどまった。

日本人トップは3位の三田(豊川工)で29分44秒。区間賞と日本人トップの25秒差は、留学生が区間賞を占めている93年以降では98年の9秒、93年の12秒に次ぐ小差だった。

3区に回ったクイラ(仙台育英)は区間歴代2位の走りで10位から首位に浮上した。

女子1区はワンジュグ(青森山田)が区間歴代4位の19分9秒で、留学生では5年ぶりの区間賞。6秒差にワイリム(豊川)が続き、初めて留学生が占めた。日本人トップは区間3位の永田(小林)で、先頭から12秒差だった。