男子第59回大会の記事
佐久長聖 初V
1位でゴールする佐久長聖の大迫傑 |
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前回、トラック勝負で敗れ、優勝校と同タイムで2位だった佐久長聖が2時間2分18秒の日本高校最高記録(外国人選手を含まない記録)で初優勝した。5区で藤井(3年)が区間賞を獲得して仙台育英などを逆転し、6、7区も区間賞で突き放した。2時間2分18秒の優勝タイムは、大会歴代3位で、西脇工が第48回大会(97年)でマークした日本高校最高記録を1分更新した。
2位は昨年優勝の仙台育英、3位は埼玉栄。男女がともに初優勝となったのは、仙台育英が男女とも優勝した93年以来、15年ぶり2回目。
02年から日本人だけで編成したチームの記録のみ対象となり、留学生を含むチームの最高記録は「高校国内国際最高記録」として区別している。仙台育英が出した歴代1、2位の記録はいずれも留学生を擁しているため、今回の佐久長聖の記録が高校最高記録となる。
■ レース評
佐久長聖 夢の2分台
5~7区で区間1位を独占した佐久長聖が、後続を圧倒した。
前半の主導権を握ったのは仙台育英。1区で上野がトップに立つと、3区ではクイラが区間2位の佐久長聖・村沢を31秒上回る快走でリードを広げた。
佐久長聖は4区の平賀が8秒差まで追いあげると、5区中継点から800メートル付近で藤井が仙台育英・佐藤をとらえ、一気に引き離した。2位は仙台育英。埼玉栄が7区で世羅を逆転して3位に入った。
雪辱 決意の日本高校最高
5区1キロ付近、仙台育英の佐藤を抜き去る佐久長聖の藤井(右) |
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アンカーの大迫が最後の直線で高々と突き上げた右手の拳に、チームの思いがこもっていた。同タイムで惜敗した昨年の悔しさを力強く晴らす、佐久長聖の圧勝劇だった。
昨年の大会後、最初のミーティングで両角監督は宣言した。「優勝には(2時間)2分台を出すしかない」。高い目標に向けて、練習のスピードを一層上げた。5,000メートルの上位7人平均は14分4秒台。全国でも例のない強いチームを作り上げた。
柱となる村沢を1区でなく、留学生のスピードに動じず流れを作る役割を託して3区へ据えた。主将の佐々木寛が一瞬、「サプライズですね」と驚いた布陣。だが村沢は「自分がチームのための走りをすべき区間」と理解。エースに好位置でつなげば勝てるという確信を全員が共有した。
1区の千葉は集団に乗り2位。主力の故障に伴い2区を任された松下も奮起し、仙台育英にわずか1秒遅れでつないだ。そして村沢。「ペースが速くてびっくりしたが焦りはなかった」。仙台育英・クイラに離されても、腰が安定し軽やかなリズムの走りを保って追い、予想より小さい32秒差でまとめた。
こうなれば後は無心で力を発揮するだけ。独走の高校最高記録に、6区区間新の佐々木寛は「皆が自分の走りをした」『全員駅伝』の結果」と胸を張った。
95年の創部から両角監督が指揮し、98年に初出場4位。以来04年の12位以外はすべて入賞した実績は、監督自らが手作りした1周600メートルのクロスカントリーコースでの練習で築いた。そしてついに史上20校目の優勝校に。「14年間の思いがこみ上げて夢のよう」と感激する監督の体が、選手の手で高々と舞った。
【石井朗生】◎ トピックス
留学生1区除外 中盤の重要性増す
留学生のいない1区で一斉にスタートする男子選手 |
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今大会から大会規定が変わり、男女とも外国人留学生は最長区間の1区から除外された。今大会には、男子3人、女子4人が出場し、いずれも中盤以降、レースを動かす重要な役割を担った。
男子は仙台育英・クイラと青森山田・ギチンジが2番目に長い3区、世羅・カロキは下りの4区に起用された。クイラはほぼ同時にたすきを受けた佐久長聖に31秒の差をつけ、カロキはトップとの差を1分26秒縮めた。
大会委員長を務める沢木啓祐・日本陸連専務理事は「3、4区に留学生が集まり、日本人選手にとってもさまざまな場面ができて全体的な底上げにつながる」と感想を話した。
レース全体を見渡して、中盤の重要性が増した。2年連続区間賞のカロキは、昨年は1区で日本人トップに25秒しか差をつけられなかったのに、今年は2キロ弱短い4区で1分以上もの差をつけた。
一般的に4区は、各校の3、4番手の選手が走る区間とされ、実力のあるランナーを投入すると、エース級が集まる1区よりも差を広げられる可能性が大きい。佐久長聖が3区にチームトップの村沢を起用し、仙台育英との差を最小限にとどめたように、戦略も様変わりしそうだ。
【百留康隆】記録
男子の佐久長聖、女子の豊川とも初優勝。男子の新たな優勝校は第44回大会(93年)の仙台育英以来で、史上20校目。北信越地区では初。女子の新たな優勝校は第17回大会(05年)の興譲館以来で、史上11校目。東海地区の学校としては初。