男子第60回大会の記事

【毎日新聞社紙面より抜粋】

現在の校名・旧校名一覧

世羅3年ぶり6回目の優勝

1位でフィニッシュする世羅・藤川涼選手
1位でフィニッシュする世羅・藤川涼選手

都道府県代表の47校に加え、記念大会の男子は地区代表11校も出場。3区でトップに立った世羅が2時間4分9秒で3年ぶり6回目の優勝を果たした。

「還暦」を迎えた男子を制した世羅は、3区カロキ(3年)が8人抜きでトップに浮上し、4区の竹内(3年)も区間賞の走りでリードを広げ、そのまま逃げ切った。優勝6回は報徳学園と並ぶ歴代4位。2位は西脇工、3位は青森山田。

■ レース評

西脇工 面目の2位

中盤以降、世羅が独走した。序盤の主導権を握ったのは佐久長聖。1区で大迫が先頭に立ち、2区で松下が差を広げた。世羅は2区を終えて先頭に47秒差の9位とやや出遅れたが、3区のカロキが8人抜きの快走を見せてトップに躍り出た。2位に26秒差をつけると、4区の竹内が差を58秒にまで広げ、その後は余裕の展開だった。

西脇工は3区の志方が好走。終盤の青森山田との競り合いを最後に制して2位に入った。3位の青森山田は県勢初のメダルとなった。

世羅の逆算の快走 「4区でリード1分」想定通り

3区4.2キロ付近、世羅のカロキ(左)が佐久長聖の臼田をとらえ、一気に抜き去る
3区4.2キロ付近、世羅のカロキ(左)が佐久長聖の臼田をとらえ、一気に抜き去る

駅伝は計算のレースだ。監督は区間タイムを想定し、展開を予想する。前日、世羅の岩本監督は「(留学生のカロキの3区ではなく)4区が終わって1分のリードがあれば勝機がある」と話していた。あえて4区を意識したのは、残り距離が短いだけではなく、自信のあるプラス材料があったからだ。

4区の竹内。カロキからたすきを受けた時は2位・西脇工と26秒差。しかし、竹内は「トップで来ると信じていたから何も考えなかった」と言う。下り区間を腰を高く保つフォームで突き進む。「沿道から差が聞こえたので、広がっているんだなと力になった」。5区にたすきをつなぐと、差はほぼ想定通りの58秒に広がっていた。

竹内にたすきが渡るまでは計算が少しだけ狂っていた。2区への第1中継所で、たすきを落とすミスで5秒のロス。カロキも後半に伸びを欠き、思うほど差をつけられない。だが、竹内は後方から追われる焦りによるオーバーペースもなく、岩本監督から「人間的に成長した」という落ち着きぶりを見せた。

3年前に優勝した時から練習内容はほとんど変わらない。その中で集団ではなく単独走の時間を増やした。自分の体調などに合わせたレースペースづくりを体に覚えさせたことが、大舞台での竹内の快走につながった。

指導者とって難しいと言われる2度目の優勝を、ほぼ計算通りに勝ち取った岩本監督。「古豪でなく、強豪と呼ばれたい」。全国高校駅伝の初代王者が、還暦を迎えた大会で新たな道を歩み始めた。

【百留康隆】

◎ トピックス

留学生がチームの手本

外国人留学生を1区から除外してから2回目の大会。男子・世羅、女子・豊川と、ともに留学生を抱えるチームが優勝した。風当たりの強い留学生だが、世羅・岩本監督は「カロキはうちのチームにとって手本だった」と胸を張る。

カロキは、ケニア・日本大使館の紹介で来日した。中学生までの陸上の実績は乏しく、「現地ではカロキより遅い選手はいなかった」(岩本監督)と言われるほど。しかし、努力で力を伸ばしてきた。朝はチーム一早い午前4時半に起き、チーム練習の1時間前から走る。日本語も勉強して、現在ではほとんどの授業を日本人と一緒に受けるという。

岩本監督は留学生を抱える効果について、「日本選手にとっては全国高校駅伝で勝つことを目標にできる上、競技に取り組む姿勢も勉強になる」と話す。実際、北主将も「カロキを見習ってきたから僕たちも強くなった」と尊敬する。

3区で区間記録に8秒に迫る走りを見せたカロキは「3年間、世羅で生活できてよかった」と喜んだ。卒業後は実業団に進む。単に速いだけでなく、チームに相乗効果をもたらしたことは間違いない。

【百留康隆】

向かい風 記録伸びず

今大会の上位校の記録は、最近の大会に比べて伸び悩んだ。男子優勝の世羅は2時間4分9秒で、2時間4分を切れなかったのは05年の仙台育英(2時間5分4秒)以来4年ぶり。女子優勝の豊川の1時間8分27秒は、02年の筑紫女学園(1時間8分24秒)以来7年ぶりに1時間8分台にとどまった。

一因として風の影響が考えられる。男子・西脇工3区の志方は「所々で強い向かい風があった」と話し、男子4区を沿道から見た渡辺高夫・前仙台育英監督も「風が舞っていて走りにくかったと思う」と言う。難しい風が選手らのスピードを妨げたようだ。

ただ、男子は2時間10分を切ったチームが37校あり、01年と並び大会最多。記念大会で出場校が多かったとはいえ、全体に上位校とのタイム差も縮まり、レベルの向上がうかがえる。女子は1時間12分を切ったチームが18校で、92年の第4回大会以降では最少となった。