男子第62回大会の記事
世羅 雪辱V
1位でフィニッシュする世羅の箱田幸寛 |
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世羅が2年ぶり7回目、2時間3分50秒で優勝を飾った。前回大会6秒差で2位だった雪辱を果たした。7回目の優勝となった世羅は、小林(宮崎)、仙台育英(宮城)と並ぶ歴代2位に浮上(トップは西脇工=兵庫=の8回)。倉敷が岡山県勢最高の2位と健闘し、九州学院が2年連続の3位。昨年初優勝の鹿児島実は23位と振るわなかった。
■ レース評
世羅 自信の快走
世羅が3区での貯金を守りきった。1区・渡辺の好走などで37秒差でたすきを受けた3区のディランゴは、2.6キロ過ぎで先頭の九州学院を一気に抜き去りトップに立つと、4区・大工谷も区間2位の走りを見せるなど、後続の追い上げを許さなかった。倉敷は8キロ余りの3区・馬場、4区・藤井の粘り強い走りで2位に食い込んだ。1区・久保田が区間賞の九州学院は中盤で遅れたものの、6、7区が盛り返して3位に入った。
ディランゴ 最強の留学生
世羅のディランゴ 3区2.6キロ付近で九州学院の吉田を追い越し引き離す |
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無駄のないぶれない走りで、前を走る選手たちを次々にのみ込んでいった。3区に登場した世羅のディランゴ。トップの九州学院との37秒差を3キロ足らずで早々と埋めた。「最強のケニア人留学生」との呼び声にふさわしい姿だった。
最初の1キロは2分33秒。トラックで五千メートルの日本高校国内最高記録を樹立した時を上回る速さで突っ込んだ。念頭にあったのは、北京五輪男子マラソン金メダリストのサムエル・ワンジルが仙台育英3年時の04年に出した区間記録(22分40秒)。昨年は1秒差で届かなかった。「狙っていた。調子は良かった」と振り返ったが、逆風に阻まれて11秒及ばなかった。
ただし、勝負という面では十分だった。絶対的な切り札を擁するゆえの正攻法。岩本監督は「ディランゴでアドバンテージを取り、守り抜く。それしかない」と語る。昨年は鹿児島実に74秒差をひっくり返されたが、今年は心配無用だった。
「(主将の渡辺)心と大工谷、日本の選手が速くなったから」とディランゴ。渡辺はエース区間の1区で5位と粘り、大工谷も競技場内で逆転された昨年7区の悪夢を吹っ切り、4区でさらに後続との差を広げた。
ケニア人留学生が都大路に登場して20年。その圧倒的な強さから常に論議の的となった。ディランゴもその雰囲気を敏感に察知したのだろう。岩本監督は「いつになく神経質で心配だった」と漏らした。
強い者は美しい。日本人であれ、外国人留学生であれ、それはスポーツの普遍の原則である。
【田原和宏】
◎ トピックス
ほろ苦、気負わず--監督1年目
今大会は実績豊富な名将の後任として、複数の新監督が都大路デビューを果たした。
過去の実績は、時として重荷になる。だが、女子で4位入賞を果たした須磨学園(兵庫)の浜本憲秀監督(32)に気負いはなかった。「一年、一年が勝負。その積み重ねですから」と、優勝2回を含む16年連続入賞後に退いた長谷川重夫前監督(現豊田自動織機監督)の教えを守り、連続入賞の伝統を17年に伸ばした。
一方、3年前の優勝を含めて過去13大会で12回の入賞を誇る男子・佐久長聖の高見沢勝監督(30)の初陣は、チームワーストの21位とほろ苦い結果に。エースが故障欠場し、1区の出遅れを取り戻す精神的な強さにも欠けたという。
「選手の調子は良かったんですが・・・・・・。難しいものですね。自信が過信になったのか」と高見沢監督。両角速・前監督(現東海大監督)の後任として4月にコーチから昇格。細かいフォームのチェックを指導に生かすなど独自色も見せたが、すぐに結果は出なかった。
伝統を継承しつつ、どう自分色のチームを作るか。この経験が財産となることを期待したい。
【井沢真】