男子第68回大会の記事

男子レース経過

1位でフィニッシュする佐久長聖の山本
1位でフィニッシュする佐久長聖の山本
 佐久長聖が後半に再逆転した。3区終了時に首位の倉敷と38秒差の2位だったが、4区・本間が区間賞の好走で12秒差に詰め、6区・鈴木も区間1位の快走でトップを奪い返した。1区・中谷、2区・服部も含め4人が区間賞に輝いた。倉敷は1位と32秒差の3位でたすきを受けた3区・ニジオカの区間賞の走りで首位に立ったが、後半伸びなかった。仙台育英は3区のムセンビが19人抜きで4位に浮上し、アンカーの喜早が3位に押し上げた。

■ レース評

雪辱4区、1年生鼓舞

6区2.9キロ付近、倉敷の八木を抜く佐久長聖の鈴木
6区2.9キロ付近、倉敷の八木を抜く佐久長聖の鈴木
 1年生らしからぬ軽快なストライドで、一気に突き放した。佐久長聖の6区・鈴木は2・5キロ付近で倉敷の八木に追いつき、「自分で優勝を決定づけよう」と約300メートル並走後にスパート。アンカーの山本も首位を譲らず、チームは倉敷に敗れて2位だった前回の雪辱を果たした。
 3区終了時点で首位の倉敷と38秒差は想定内。逆転へ勢いをつけたのは4区の本間だ。ペースを上げ、差を12秒まで詰めた。前回も4区だったが、首位でたすきを受けながら失速。寮の自室に当時の新聞記事を張って悔しさを忘れず、今回は志願して4区を走って「リベンジを果たせた」。鈴木が「本間さんの走りを見て、やるしかないと気合が入った」と明かすように、後続の選手たちを鼓舞する本間の快走だった。
 今年を含め、5年連続5位以内の佐久長聖。強さの背景には恵まれた環境がある。学校近くに1周600メートルの専用クロスカントリーコースがあり、寮の食事は栄養士が管理。地元選手で固めたチームが多い中、その環境が後押しとなり、全国から有力選手が集まる。さらに高見沢監督は「今の子は体が弱くなっている」と体作りを重視。この日は1年生3人が起用されたが、下級生から厳しいレースをこなせる体力をつけさせている。
 全国トップの予選タイムをこの日は3分余り縮め、1区区間賞のエース・中谷は「夢なんじゃないか」と興奮気味。プラン通りの後半逆転勝利に高見沢監督も「全員駅伝だった」と選手たちをたたえた。【新井隆一】

佐久長聖・山本嵐主将

 佐久長聖は、一度はバラバラになったチームを山本嵐主将(3年)が率い、「全員駅伝」で復活を遂げた。
 「チームがまとまりません」。今年6月、山本選手は、高見沢勝監督の前で初めて泣いた。昨年の都大路で倉敷(岡山)に敗れて準優勝に終わり、新メンバーで雪辱を固く誓ったはずだった。しかし3月に全国規模の大会を制してから緊張感が無くなっていた。さらに4月、部員が初めて30人を超えて上級生の目が行き届かず、忘れ物が増えたり、遅刻が目立ったりするようになった。
 転機は、10月に鳥取県で全国の高校チームが競った日本海駅伝だった。またしても倉敷に敗れ優勝できなかった。「都大路も危うい」。チームに強い危機感が生まれ、まず、本間敬大選手(3年)が部員への生活指導で協力してくれるようになった。
 山本選手は問題が起きると厳しく部員を責めることもあった。他の3年生が「厳しいだけでは人は付いてこない」と山本選手が叱った下級生を後から励ますなどフォローした。
 県予選を突破し、チームは徐々に一体感を取り戻していった。大会前には山本選手の心にも余裕が生まれ、「笑顔でつなごう」と、下級生の選手に声をかけるようになった。
 レース本番、本間選手は4区で区間賞。アンカーの山本選手につないだ6区の鈴木芽吹(めぶき)選手は1年生で、「先輩たちの苦労を吹き飛ばす走りをしよう」と意気込み、倉敷の選手を抜いて堂々のトップでたすきを渡した。
 「自分は不器用。でも、チームがギリギリのところでまとまってくれた。本当に頼もしかった」。山本選手は照れくさそうに振り返った。主将として有終の美を飾ったが、チームには連覇という目標ができた。【島袋太輔】