男子第69回大会の記事

男子レース経過

1位でフィニッシュする倉敷の井田
1位でフィニッシュする倉敷の井田
 倉敷が粘り腰で制した。3区のキプラガットが区間賞の力走で7人を抜き首位に浮上したが、4区で世羅に抜かれて2位に後退。しかし、6区の石原が2.6キロ付近で世羅に追いつき、2.8キロ付近で突き放した。3区以降はすべて区間3位以内と安定感が際立った。世羅は4区でムワニキが区間タイ記録と好走したが終盤で力尽きた。学法石川は2区の小指、5区の大塚とつなぎの区間で力を発揮して3位。優勝候補では佐久長聖が中盤で振るわず、仙台育英は序盤の出遅れが響いた。

■ レース評

6区、17秒差から一気に 歴代4位、好記録

6区2・8キロ付近、世羅の北村をかわす倉敷の石原
6区2・8キロ付近、世羅の北村をかわす倉敷の石原
 この瞬間を待っていた。6区の2.8キロ付近。トップの世羅との17秒差を追いついた倉敷の2年生・石原が、鋭いスパートで突き放す。「下りで(ペースを)上げようと思っていた」。チームは昨年、この付近で佐久長聖に逆転されて2位。因縁の地でリベンジを果たし、そのまま逃げ切って王座を奪還した。
 優勝へのプランは崩れたかに見えた。3区のキプラガットが7人抜きの区間賞で想定通りにトップに立ち、2位と35秒差に広げた。だが、4区にケニア人留学生を置く世羅の戦略がはまり、逆転を許す。「想定していなかった展開」と石原が言えば、1区のエース八木は「正直、駄目かと思った」。
 だが、新監督の思惑だけが違った。昨年の反省を踏まえて「準エース(石原)を6区に持ってきた」。ライバルの力も見極め、終盤でも逆転可能な「2段構え」の布陣が的中。昨年6区を担った八木は「感動した」と後輩の石原をたたえた。
 中学時代に全国レベルだった選手がいない「雑草軍団」。各選手が腹八分のペースながら距離重視の練習で足腰をしっかり作り、5000メートルの平均タイムは全国屈指を誇る。さらに、昨年の屈辱を胸に雑用も率先する3年生を慕い、下級生が試合への心構えなどを聞く機会も増えて全体が底上げされた。八木は「後輩が(レベルが)上がったから、3年生も上がれた」。その選手層の厚さが本番の終盤でも利いた。
 岡山県倉敷市は今夏に西日本豪雨で大きな被害を受け、学校も練習場所のトラックが使えなかったハンディキャップも乗り越えた。「倉敷は元気だとアピールしたかった」。うれし泣きし、さらに満面の笑みを浮かべる選手の横で、新監督が目を細めた。【新井隆一】

世羅、復活の2位 4区、いったんは首位

 その背中を捉えることはできなかった。トップと13秒差でタスキを受けた世羅の7区・倉本は「徐々に追いつける」と自分に言い聞かせた。2キロ過ぎでペースを上げて差を縮めたが、後半は焦りからペースが乱れた。14秒差の2位でフィニッシュ。チームメートに謝るかのように両手を合わせると泣き崩れた。
 5区までは予想以上の展開だった。岩本監督が「一か八かだったが、下りの方が生きる」と留学生のムワニキを4区に起用。これがうまくはまり、区間タイ記録で45秒差を逆転してトップに躍り出た。
 5区まで首位をキープしたが、倉敷に再逆転を許し、岩本監督は「向こうの執念が上回っていた」と負けを認めた。
 最多優勝9回を誇るが、一昨年は7位、昨年は20位と優勝争いに絡めなかった。「2年間はトップを走るところを見たことがなかった。今年、優勝争いができたことは自信になる」と主将の梶山。出場メンバーの中で来年も残る5人の後輩たちに期待をかけた。【長田舞子】