男子第72回大会の記事

男子レース経過

1位でフィニッシュする世羅の村上響
すべての中継所を1位で通過した世羅が逃げ切った。1区の森下は終盤の佐久長聖との競り合いを制し、3区のコスマスは2年連続の区間賞、アンカーの村上も区間賞と好走した。洛南は5位でたすきを受けた2区の前田が2位に押し上げ、3区の佐藤がこの区間で日本選手トップの走りをするなどして順位をキープし、日本選手だけの高校最高記録を更新した。仙台育英は3区終了時点で10位だったが、後半に巻き返して3位に入った。

■ レース評

想定外、冷静スパート 1区で作った流れ守る

競り合いを制し、中継所の直前で前に出る世羅1区の森下(右)
駅伝は「流れのスポーツ」とも言われる。世羅は後半の主要区間の4区で危機があったものの、流れを渡さなかったのが勝因となった。
3区のケニア出身の留学生・コスマスが先頭でたすきをつないだ時点で、2位の洛南との差は15秒。「1分は差をつけたい」(新宅監督)としていた世羅にとって、想定外の僅差だった。だが、4区の吉川は冷静だった。洛南の宮本に2キロ過ぎに前に出られても「序盤は設定通りのタイムを守る」とピタリと後ろにつけた。
勝負のスパートをかけたのは残り約2キロ。「短い距離のスパート合戦では競り負ける可能性もある。『ここでやるのか』という予想外のことを起こせば相手も焦るんじゃないか」。苦しげな表情を浮かべながらもハイペースで押し切った。差は8秒でのたすき渡しとなったが、逆転を許さずに流れを渡さず、5区以降は盤石のリレーで突き放した。
世羅はアンカーを担う予定だった主将の塩出が脚の炎症でメンバーを外れる決断をした。動揺が広がってもおかしくない状況だったが、昨年に続いて1区を担った森下は「アンカー区間までにみんなでリードを作る」と考え、区間賞で発進。チームに最高の流れをもたらした。
大会記録まで13秒に迫る好タイムで優勝してから1年。今季はスピード練習の設定タイムを上げるとともに、地元のクロスカントリーコースや河川敷を地道に走り込んで脚力を磨いた。「他校も強いが、王者の意地を見せたかったし、チーム全体に連覇したい思いがあった」と吉川。歴代最高記録に3秒差と迫り、歴代最多優勝回数を更新し、全国大会のタイム歴代10傑のベスト3を世羅が占めた。その強さを全国のライバルに見せつけた。【伝田賢史】

洛南2位、留学生に対抗 日本選手のみ、記録更新

日本選手7人による前人未到の2時間1分台に到達した洛南。国内史上最速の高校生ランナーの佐藤だけではないことを数字で証明した。
3区の終盤。強い風に苦しむ佐藤は倉敷のイマヌエルに追いつかれた。「ここで抜かれたら、後の走者が苦しくなる」とラストスパート。昨年の自身の3区でのタイムを30秒縮める23分10秒の快走を見せた。
大きな飛躍を遂げたのは、二つのポイントがある。一つは、佐藤が「劇的に変わった」と言う準備運動のメニューの変更だ。従来はラジオ体操のようなストレッチだったが、今年1月から首付近や胸付近、股関節の可動域を広げる動きに重点を置き、時間も15分増の45分に延ばした。佐藤は腕の振りが大きくなり、「前への推進力が増えた」。
二つ目は「伝播(でんぱ)」。昨年の都大路で留学生との力の差を感じたのを機に、佐藤は「留学生が身近な目標になった」。エースの意識の高さに周囲も引っ張られて、志の高さが他の選手にも広がった。佐藤と同じ3年の1区・溜池はけがが治った夏以降に急成長。奥村監督が1年前から温めていた「3区・佐藤」の起用にメドが立った。高校生の伸びしろは無限大だ。【安田光高】

◎ トピックス

2年連続30回目出場のつるぎ(徳島)は1区の選手が体調不良のため欠場し、チームも欠場扱いとなった。つるぎの2区以降の選手の区間記録は認められた。