男子第76回大会の記事
男子レース経過
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| 男子の1位でフィニッシュする学法石川の美澤央佑選手 |
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■ レース評
◇1区で勇気づけ、大会新
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| 1区、西脇工を引き離す学法石川の増子陽太(手前) |
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「『本番で弱い、駅伝は勝てない』と言われてきて……。でも、今回だけは全員が予想以上の走りを見せてくれました」
就任17年目の松田和宏監督も驚きを口にするほど、選手たちの走りは序盤から想像をはるかに超えた。高校トップクラスの選手が激しいデッドヒートを繰り広げた1区。上り坂にさしかかった7㌔すぎで、学法石川の3年生の増子陽太は「(周りの)ペースが落ちてきたら仕掛けると決めていた」とギアを上げた。競っていた西脇工の新妻遼己を突き放し、1区の従来の日本選手最高記録を23秒更新。20秒のリードを作った。
この快走がチームを勇気づけた。3区の3年生・栗村凌も区間賞の快走でさらに差を広げた。そのまま、一度もトップを譲らなかった。歓喜のフィニッシュテープを切った1年生の美沢は「もう本当にレベルが違う。増子さんがつないでくれたおかげ」と感謝を口にした。
最近は、優勝を目指せるだけの戦力を擁しながらも上位争いに食い込めなかった。しかし、2023年春に3000㍍日本中学記録保持者(当時)の増子、全国大会で入賞経験を持つ栗村の入学が契機になる。「2人が3年生時に優勝すること」はチームの大きな目標になった。
高校陸上界では珍しく、トラックを中心としたスピード強化で力を伸ばした。増子も「先生の方針があったからこそ、ここまで来ることができた」と実感を込める。
結実した「3カ年計画」に松田監督は「本当に褒めてあげたいと思います」。歓喜に揺れる選手たちを見つめ、しばしの余韻に浸った。【牧野大輔】
◇鳥取城北4位、新たな力 集団転入生と壁なく
鳥取城北の2区を任されたのは山根爽楽(そうら)。4月に大牟田(福岡)から集団転校してきたチームの中で、もともと鳥取城北にいた選手として唯一の出場だった。
赤池健監督が「雲のかなたまで有頂天になる選手」と爆発力を期待しての起用だった。
3位でたすきを受けた山根は「楽しみと緊張が半々だった」。2人に抜かれたが、粘って5位でつないだ。力を出し切り、チームの4位入賞に貢献した。
これまでの鳥取城北の最高成績は2年前の30位で大きく更新することになり、「全国で優勝争いができたのは良い経験だった」と笑顔を見せた。
今春、赤池監督とともに大牟田の選手が転校してきた。大牟田は前回大会2位で全国優勝5回の強豪だ。山根は「初めはレベルが違いすぎてびっくりした」と振り返る。
それは大きな刺激にもなった。「良い走りをしても上がいる。もっと頑張ろうという気持ちが保てた」
もともと鳥取城北にいた選手は、11月の県予選ではゼロだったが、成長を遂げた山根がメンバー入りした。転校してきた主将の宗像琢馬は「壁なく競い合ってきた結果」と胸を張る。
山根に1区3位でつないだエース・本田桜二郎も「底上げができた。(転校した)自分たちが良い影響を与えられたならうれしい」とはにかんだ。
宗像は「後輩たちには次の伝統を築いていってほしい」と鳥取城北の新たな歩みの始まりを期待した。【深野麟之介】
赤池健監督が「雲のかなたまで有頂天になる選手」と爆発力を期待しての起用だった。
3位でたすきを受けた山根は「楽しみと緊張が半々だった」。2人に抜かれたが、粘って5位でつないだ。力を出し切り、チームの4位入賞に貢献した。
これまでの鳥取城北の最高成績は2年前の30位で大きく更新することになり、「全国で優勝争いができたのは良い経験だった」と笑顔を見せた。
今春、赤池監督とともに大牟田の選手が転校してきた。大牟田は前回大会2位で全国優勝5回の強豪だ。山根は「初めはレベルが違いすぎてびっくりした」と振り返る。
それは大きな刺激にもなった。「良い走りをしても上がいる。もっと頑張ろうという気持ちが保てた」
もともと鳥取城北にいた選手は、11月の県予選ではゼロだったが、成長を遂げた山根がメンバー入りした。転校してきた主将の宗像琢馬は「壁なく競い合ってきた結果」と胸を張る。
山根に1区3位でつないだエース・本田桜二郎も「底上げができた。(転校した)自分たちが良い影響を与えられたならうれしい」とはにかんだ。
宗像は「後輩たちには次の伝統を築いていってほしい」と鳥取城北の新たな歩みの始まりを期待した。【深野麟之介】
◎ トピックス
◇適温、走りやすいコンディション
雨の中で高次元のレースができた理由は何か。男子マラソン元日本記録保持者で、日本陸上競技連盟強化委員会の高岡寿成シニアディレクターに分析してもらった。
男女ともに有力チームによる混戦を予想したが、男子優勝の学法石川、女子優勝の長野東は圧倒的なレース運びを見せた。大会の歴史を振り返っても、指折りの強さだ。
レース中に雨が降りしきる中でも、男女の優勝チームは大会新記録、またはそれに迫るタイムを残した。要因は周到な準備と区間配置の妙にある。
まず、降雨によって気温が適度に下がり、走りやすいコンディションとなったことで好記録の機運が生まれた。
学法石川、長野東の選手は路面がぬれて足元に不安がある中で何事もなく走ったように見えた。日ごろから悪条件を想定した練習をしているのだろう。だからこそ、普段通りの力が出せた。
両監督の区間配置が抜群に当たったことも、快記録を後押ししたと言える。例えば、長野東は前回大会最長1区(6㌔)の区間賞だった真柴愛里選手を3区(3㌔)に回して留学生と勝負させた。力のあるランナーが地力に勝る留学生に向かっていったことで区間新記録が生まれ、レース全体をさらに優位にした。
学法石川もエース区間1区(10㌔)の日本選手最高記録を樹立した増子陽太選手だけでなく、他の主要区間でも選手が起用に応え、2位以下を引き離す「二の矢」を放った。
指導者が選手の状態を的確に把握し、選手は期待通りの走りを見せる。互いの思いが合致していた。高校時代から高次元の記録に挑戦する気概を持ち続けることは、さらなる高みを見据えるのに必要なことだ。
加えて、今大会には9月の世界選手権東京大会に出場した久保凜選手(東大阪大敬愛)も出場した。世界を知る同世代と競うことで刺激を受けるのは、得がたい経験だ。
国際大会の出場経験がある男子の簡子傑選手(宮城・仙台育英)は、高い競技レベルを求めて台湾から留学してきた。若い時から高め合える関係性を築くことも、今後に生きる。
駅伝を通じ、次のステージへ飛躍するきっかけをつかむことができる。そう感じたレースだった。(日本陸上競技連盟強化委員会シニアディレクター)
男女ともに有力チームによる混戦を予想したが、男子優勝の学法石川、女子優勝の長野東は圧倒的なレース運びを見せた。大会の歴史を振り返っても、指折りの強さだ。
レース中に雨が降りしきる中でも、男女の優勝チームは大会新記録、またはそれに迫るタイムを残した。要因は周到な準備と区間配置の妙にある。
まず、降雨によって気温が適度に下がり、走りやすいコンディションとなったことで好記録の機運が生まれた。
学法石川、長野東の選手は路面がぬれて足元に不安がある中で何事もなく走ったように見えた。日ごろから悪条件を想定した練習をしているのだろう。だからこそ、普段通りの力が出せた。
両監督の区間配置が抜群に当たったことも、快記録を後押ししたと言える。例えば、長野東は前回大会最長1区(6㌔)の区間賞だった真柴愛里選手を3区(3㌔)に回して留学生と勝負させた。力のあるランナーが地力に勝る留学生に向かっていったことで区間新記録が生まれ、レース全体をさらに優位にした。
学法石川もエース区間1区(10㌔)の日本選手最高記録を樹立した増子陽太選手だけでなく、他の主要区間でも選手が起用に応え、2位以下を引き離す「二の矢」を放った。
指導者が選手の状態を的確に把握し、選手は期待通りの走りを見せる。互いの思いが合致していた。高校時代から高次元の記録に挑戦する気概を持ち続けることは、さらなる高みを見据えるのに必要なことだ。
加えて、今大会には9月の世界選手権東京大会に出場した久保凜選手(東大阪大敬愛)も出場した。世界を知る同世代と競うことで刺激を受けるのは、得がたい経験だ。
国際大会の出場経験がある男子の簡子傑選手(宮城・仙台育英)は、高い競技レベルを求めて台湾から留学してきた。若い時から高め合える関係性を築くことも、今後に生きる。
駅伝を通じ、次のステージへ飛躍するきっかけをつかむことができる。そう感じたレースだった。(日本陸上競技連盟強化委員会シニアディレクター)
◇仙台育英2位、出遅れ響く 台湾留学生、2人抜き感慨 簡子傑・3年
台湾出身という異色の留学生が雨の都大路を初めて駆け抜けた。区間4位の力走を見せた仙台育英の簡子傑(かん・しけつ)は「こんな舞台で走れるなんて、入学した時を考えると信じられない」。感慨深げに日本で鍛錬した3年間を振り返った。
中長距離が盛んでない台湾のホープとして注目されている。11月末には5000㍍で台湾新記録を樹立。「強い仲間と戦える環境が台湾にはないので日本に来た」と理由を語る。
進学先に選んだ仙台育英は全国高校駅伝で歴代2位タイの優勝8回を誇る名門。留学生は起用は1人までというルールがあり、簡はチームメートであるケニア出身者らとのメンバー争いを強いられた。「毎日毎日、勝ちたい思いで必死に練習してきた」。最終学年でようやく大舞台を走る権利を勝ち取った。
優勝候補の一角として臨んだチームは1区でトップから47秒差と想定以上に出遅れた。6位でたすきを受けた簡は2人を抜き、32秒差に縮めたが、後続は最後まで学法石川との差を埋められなかった。
準優勝に終わり、6年ぶりの優勝はならなかった。しかし、従来の大会記録を1秒上回る2時間0分59秒の好記録に貢献することができた。「自分の力不足で悔しい思いがあるが、大学でやり返せると思う。台湾代表を目指し、世界の舞台で戦いたい」。来春に進学予定の中央大でのさらなる飛躍を見据えた。【長宗拓弥】
中長距離が盛んでない台湾のホープとして注目されている。11月末には5000㍍で台湾新記録を樹立。「強い仲間と戦える環境が台湾にはないので日本に来た」と理由を語る。
進学先に選んだ仙台育英は全国高校駅伝で歴代2位タイの優勝8回を誇る名門。留学生は起用は1人までというルールがあり、簡はチームメートであるケニア出身者らとのメンバー争いを強いられた。「毎日毎日、勝ちたい思いで必死に練習してきた」。最終学年でようやく大舞台を走る権利を勝ち取った。
優勝候補の一角として臨んだチームは1区でトップから47秒差と想定以上に出遅れた。6位でたすきを受けた簡は2人を抜き、32秒差に縮めたが、後続は最後まで学法石川との差を埋められなかった。
準優勝に終わり、6年ぶりの優勝はならなかった。しかし、従来の大会記録を1秒上回る2時間0分59秒の好記録に貢献することができた。「自分の力不足で悔しい思いがあるが、大学でやり返せると思う。台湾代表を目指し、世界の舞台で戦いたい」。来春に進学予定の中央大でのさらなる飛躍を見据えた。【長宗拓弥】

