 |
第1中継所手前で和歌山北の小倉を抜き先頭に立つ仙台育英の小海 |
3区から4区につなぐ第3中継所直前。仙台育英の清水が優勝候補・神村学園の黒川を抜き去り、トップに躍り出た。「(神村学園に)10回に1回勝てるかどうか」と思っていた釜石監督が優勝を確信した瞬間だった。
後半勝負を想定していた釜石監督にとって、2区間を残しての逆転はうれしい誤算だった。立役者になったのは1区を担った2年生の小海だ。5.5㌔付近で和歌山北の小倉と先頭に立つと、一度は引き離されながらも中継所直前で抜き、トップでたすきをつないだ。「勢いをつけるためにも区間賞を取りたかった」と小海。1区14位と振るわなかった神村学園に34秒差をつける快走だった。2区での後退は想定内。抜かれた神村学園との差はわずか6秒しかなく、実力者の木村を最終5区に配置した仙台育英にとっては、まさに理想的なレース展開だった。
28回目の出場にして、初めて日本選手だけで挑んだ大会は新たな挑戦でもあった。エース格だったケニア人留学生のムソニが8月に右大腿(だいたい)骨を骨折。全治1年の重傷で、チーム内に暗い空気が広がった。釜石監督も、その後の合宿で「(都大路優勝の)目標を変更するか話し合ってくれ」と選手に伝えたほど。だが、選手たちがミーティングで出した結論は「優勝を狙う」だった。
主将で5区の木村は「(ミーティング以降)目的意識を持って練習するようになった」と明かす。さらに学年の垣根を越えて話し合ったことで「仲間意識が芽生え、チームが一つにまとまった」。小海も木村からアドバイスを受けて、今月に入り1年ぶりに自己記録を更新するなど急成長した。神村学園に敗れ、連覇を逃した前回大会から丸1年。チームの危機を乗り越えた先に、2年ぶりの栄冠が待っていた。【大東祐紀】