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1区中間地点の手前で、常磐の並木(左)を引き離す仙台育英の米沢 |
「超前半型」の策がはまった。仙台育英の釜石監督には緻密な計算があった。気温が低く、冷たい風が吹く厳しい条件を想定。「前半から強い選手を並べないと流れを作れない」と判断し、絶対的なエースである米沢を1区に起用して先行逃げ切りを図った。
釜石監督の頭では当初、2人のエース級のうち、2年の杉森を1区、3年で主将の米沢を最終5区に配置する構想だった。しかし、厳しい条件下で求められるのは集団で競り合う能力ではなく、単独での走力だった。
「2位以下を引き離すことだけを考えていた」と米沢。スタート直後から区間記録に迫るようなペースで飛び出し、主導権を握った。2位に30秒差を付ける快走は釜石監督が「8割方(優勝が)決まった」という独走態勢を生み、ライバル校を慌てさせた。
米沢が「(もっと)引き離して」と杉森にたすきをつなぐと、チームはこの勢いのまま3区連続の区間賞の快走劇に。4区を走る1年生の渡辺が中継所でのたすき渡しの直前で落としてしまうハプニングがあったが、釜石監督が「たすきを落とすまで完璧でした」と冗談めかすほどの完勝だった。
昨年はけがの影響でベストな状態で大会に臨めなかった。今年はけが防止のため練習の「量」を3割ほど減らす一方、設定タイムを上げるなど練習の「質」の向上を図った。優勝した2017年、19年の練習内容を上回っていたという。
周到な準備と「作戦勝ち」でつかんだ5回目の栄冠だった。【荻野公一】