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競り合いを制し、中継所の直前で前に出る世羅1区の森下(右) |
駅伝は「流れのスポーツ」とも言われる。世羅は後半の主要区間の4区で危機があったものの、流れを渡さなかったのが勝因となった。
3区のケニア出身の留学生・コスマスが先頭でたすきをつないだ時点で、2位の洛南との差は15秒。「1分は差をつけたい」(新宅監督)としていた世羅にとって、想定外の僅差だった。だが、4区の吉川は冷静だった。洛南の宮本に2キロ過ぎに前に出られても「序盤は設定通りのタイムを守る」とピタリと後ろにつけた。
勝負のスパートをかけたのは残り約2キロ。「短い距離のスパート合戦では競り負ける可能性もある。『ここでやるのか』という予想外のことを起こせば相手も焦るんじゃないか」。苦しげな表情を浮かべながらもハイペースで押し切った。差は8秒でのたすき渡しとなったが、逆転を許さずに流れを渡さず、5区以降は盤石のリレーで突き放した。
世羅はアンカーを担う予定だった主将の塩出が脚の炎症でメンバーを外れる決断をした。動揺が広がってもおかしくない状況だったが、昨年に続いて1区を担った森下は「アンカー区間までにみんなでリードを作る」と考え、区間賞で発進。チームに最高の流れをもたらした。
大会記録まで13秒に迫る好タイムで優勝してから1年。今季はスピード練習の設定タイムを上げるとともに、地元のクロスカントリーコースや河川敷を地道に走り込んで脚力を磨いた。「他校も強いが、王者の意地を見せたかったし、チーム全体に連覇したい思いがあった」と吉川。歴代最高記録に3秒差と迫り、歴代最多優勝回数を更新し、全国大会のタイム歴代10傑のベスト3を世羅が占めた。その強さを全国のライバルに見せつけた。【伝田賢史】