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3区、佐久長聖の吉岡大翔(右)を突き放す倉敷のサムエル・キバティ |
最大のライバルを倒すために打った「ばくち」が、吉と出た。2人のケニア出身留学生をエントリーした倉敷。新雅弘監督が3区に起用したのは、過去2大会を走った3年生ではなく、2年生のサムエル・キバティだった。都大路デビューで圧巻の走りを見せて区間新記録をマークし、優勝を大きく引き寄せた。
優勝を争うライバル・佐久長聖は、3区に5000メートルで高校新記録をマークした吉岡大翔(ひろと)を起用し、留学生と真っ向勝負の構えだった。キバティは吉岡と6秒差でたすきを受けると、力強いフォームでじわりと追い上げ、3.5キロ付近で逆転。逆に15秒差をつけて4区につないだ。
こうなれば、都道府県予選タイムが全国トップの粒ぞろいの選手たちが着実に自分の仕事を果たすだけだ。4区の2年生・桑田駿介は「あまり差がなくて不安もあったが、監督の指示通りに前半抑えて、後半ペースアップできた」。区間賞の力走で、佐久長聖とのリードを約30秒に広げて勝負を決定づけた。
終わってみれば7人全員が区間5位以内という安定感抜群のレース運び。1区を走ったエースの南坂柚汰が「自分があと10秒速く走れていれば、(他の選手の奮起も含めて)2時間0分台を出せた可能性があった」と悔しがるほどの快勝だった。
新監督は留学生の勧誘を代理人に任せることなく、ケニアまで直接赴いてレースを観察し、声を掛けるという。過去2大会を走った3年生留学生のイマヌエル・キプチルチルを「良くもなく悪くもなくたすきを持ってくるタイプ」と評価。キバティは都大路の経験がなく、寒さへの対応力も未知数だったが、「爆発力がある。失敗レースになるかもしれないが、中途半端に行って後悔するよりは」(新監督)と抜てきした。その眼力が光った。
倉敷の日本選手たちは、中学時代に目立った実績のない選手が多い。それが、新監督による「けがだけはしないように、腹八分目の練習」をこつこつと積み上げ、過去7大会連続入賞、うち優勝2回という強力なチームに育っている。
歴代最長の45年連続出場を続け、選手たちは「一度途切れたら二度と再現できない」というプレッシャーとも戦ってきた。全国の強力なライバルチームと競り合い、持てる力を存分に発揮してみせた。【伝田賢史】