男子第40回大会の記事

【「全国高等学校駅伝競走大会 50年史」(全国高等学校駅伝競走大会実行委員会・2000年5月発刊)より抜粋】

現在の校名・旧校名一覧

兵庫決戦制し、報徳優勝

激闘の末、高校最高記録で優勝した報徳学園・村松
激闘の末、高校最高記録で優勝した報徳学園・村松

報徳学園と西脇工の兵庫県同士が激しく首位を争い、西京極陸上競技場内の勝負に持ち込まれたが、報徳学園が1秒差で競り勝ち、史上初の4分台に突入する2時間4分49秒の高校最高記録、大会新記録で4年ぶり5回目の優勝を果たした。1秒差での優勝は史上最短。

報徳学園は兵庫県予選、近畿大会で西脇工に敗れたが、3回目の勝負で雪辱した。地区大会代表校の優勝は第10回大会の西条農以来30年ぶり2回目。同県勢で1、2位を占めたのは第16回大会の福岡大大濠、大牟田の福岡県勢以来24年ぶり。3位には小林、4位には昨年優勝の大牟田が入った。

■ レース評

史上最短 1秒差の死闘

1区は武井隆(國學院久我山)が7.5キロから独走。中村(大牟田)が2位につけた。だが、2区では山内永(中京)が先頭に。大地(西脇工)が区間賞の走りで7人抜きの5位に躍進。金子(報徳学園)は4人抜いて3番手へ。

3区は下山(報徳学園)が川内(大牟田)と並走しながら、1.5キロで先頭の山内朋(中京)をとらえ、中継点では2位の山内朋に70メートル差。堀尾(西脇工)も3位に。4区で北門(西脇工)が追い上げ6キロ手前からトップの森川(報徳学園)と並んだ。ところが7番手だった鶴里(小林)が2人を7.7キロで抜き去った。

小林は5区で後退し、2キロ付近から兵庫2校によるマッチレース。並走が続いた後、藤原(報徳学園)が残り300メートルでスパート、山本(西脇工)に約40メートル差をつけた。6区・荻野(報徳学園)がすぐに90メートル差にしたが、斎藤(西脇工)は中継点では並びかけ、最終区へ。

7区は、村松(報徳学園)と結城(西脇工)が互いに譲らぬ競り合い。し烈な勝負は競技場へ。結城はいったん前に出たが、すぐに村松が抜き返し、第3コーナー手前でほぼ同時にスパート。わずかに先行していた村松が2メートルのリードを守ってゴールした。

「勝負は全国」雪辱果たす

兵庫県予選で競り合った西脇工・堀尾と報徳学園・森川(左)
兵庫県予選で競り合った西脇工・堀尾と報徳学園・森川(左)

逃げる報徳学園、追う西脇工。兵庫県勢の積年の宿敵同士が互いに譲らず、がっぷり組み合ったままでなだれ込んだ西京極陸上競技場。残り500メートルで、まず西脇工・結城がスパートをかけた。だが、報徳・村松はすぐに追いつき、残り350メートルからは逆に村松が前へ出る。これで決まりかと思えたが、1年下の2年生・結城は歯を食いしばっての追走だ。あと200メートル。再び村松がスピードアップして引き離しにかかる。またしても、食い下がる結城。最後の直線だ。迫るゴールテープ。村松は3度目のスパートをかける。それでも結城の猛追はどこまでも続いた。大歓声の中、胸に痛みさえ感じるラストシーンだった。

わずか1秒差、たった2メートル差の1位と2位。両校そろっての高校最高記録更新。しかも、驚異的な夢の2時間4分台への突入だ。

1ヵ月半前の兵庫県予選で報徳は、アンカー勝負の末に4秒差で西脇工に敗れた。この時、6区で顔を合わせたのが、この日のアンカーとなった村松と結城。力は五分と五分。だが、村松はインターハイ3,000メートル障害3位のラストのスピードに加え、なによりも都大路を知っている強みがあった。

村松にとっては3年連続の全国大会出場。しかも、昨年は同じ7区を走り区間賞の快走を見せていた。今年の県予選、近畿大会でいずれも西脇工に敗れたが、記念大会のお陰で出場権を得た報徳・鶴谷監督は「勝負は全国だ」と必勝を期してオーダーを組んだ。それは、昨年3位の時から残るメンバーのうち3区下山、4区森川、さらに村松の3人を昨年と同じ区間にあてる思い切ったオーダーだった。

6区からわずか1秒差のトップでタスキを受けた村松は「絶対に負ける気がしなかった。普通の年なら出られないチームなのに、出られただけでも幸せだとレース前に気づき気楽に走れた。最後の最後まで楽しく走れました」とリラックスした心境だったことを明かした。

敗れた西脇工の渡辺監督は「2メートルの差は、うちの7人の走者がそれぞれ、もう“一歩”ずつ速くタスキをつないでいれば、勝てた距離です。4年間のブランクは長かった。もう一頑張りの差が1秒差になった」と淡々と話した。

【石井 修】

◎ トピックス

6人抜き、驚異の区間新

4区で6人抜きの快走を見せ、区間新を更新した小林・鶴里
4区で6人抜きの快走を見せ、区間新を更新した小林・鶴里

右の手のひらに「感謝」、左の手のひらに「区間賞」の文字を書き込んだ小林の4区・鶴里が7位から一気にトップに躍り出る快走。これまでの区間記録23分34秒を大幅に上回る22分59秒で見事に念願の区間賞を手にした。「前の走者を追い越すことだけを考えて走った。練習の時から調子は良かったけれど区間賞がもらえるとは思ってもみなかった。信じられない」。チームも同校としては初めての2時間5分台で堂々の3位。鶴里にとって今年は夢を見ているようないいことずくめの大会だったようだ。

記録

浜松商・清水選手が棄権

浜松商の1区・清水直也(3年)が左足を痛めて4.5キロ付近で途中棄権。診断の結果、足底筋(土踏まず)断裂の疑いで全治3週間と分かった。


高校最高、大会新記録

2時間4分49秒の報徳学園など2校が更新。これまでの記録は、高校最高は西脇工が今年の兵庫県予選で記録した2時間5分38秒、大会記録は第39回大会で大牟田が記録した2時間5分53秒。


区間新記録

4区で鶴里初(小林)が22分59秒、7区で結城和彦(西脇工)と村松明彦(報徳学園)が14分30秒で記録。

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